第23話 束の間の休日とツンデレ散歩
連日の訓練で疲労も溜まってきた陽介に、思わぬ休息が与えられる。
ガルドからの「今日は休みだ」という一言。そして――「デートしてこい」。
その言葉に反応したアイリスのツンデレは、火を吹くのだった。
束の間の休日、街を歩く二人の時間は、戦いとは違う意味で心を揺らす。
思わぬ休み
朝。いつものように訓練場に顔を出した陽介は、気合を入れて準備運動をしていた。
木剣を握り、弓の弦を軽く引き、今日もまたヘロヘロになる予感を胸に抱えながら。
そこへガルドが現れた。
しかし、いつものように豪快に怒鳴るのではなく、どこかゆるい笑みを浮かべている。
「――今日は休みだ」
「えっ!?」
陽介の手から木剣がぽとりと落ちた。
「や、休みって……あのガルドさん?」
「ギルドマスターから急な呼び出しがあってな。俺がしばらく抜けることになる。だから訓練は休みだ」
「え、でも俺は……」
陽介が食い下がろうとすると、ガルドはニヤリと笑った。
「たまには休め。体を休めるのも鍛錬のうちだ。それに……」
わざとらしく声を低めて言った。
「アイリスちゃんと街をぶらぶらしてこい。――デートだ」
その場の空気が一瞬凍りついた。
アイリスのツンデレ爆発
「な、な、な、なに言ってるのガルド!?」
アイリスが真っ赤になって叫ぶ。しっぽがぶんぶんと音を立てそうな勢いで揺れていた。
「だ、だれが! 陽介とデートなんかするもんですか! ねぇ陽介!」
陽介は困った顔をしながら手を上げた。
「えっと……俺は別に、デートとかじゃなくても、一緒に街を歩けたら楽しいと思うけど……」
「~~っ!」
アイリスは顔を覆ってうずくまり、次の瞬間怒鳴った。
「そ、それがデートって言ってるのよバカーー!」
ガルドは腹を抱えて笑った。
「はっはっは! 若いってのはいいな。ほら、俺は行くから。せいぜい楽しんでこい」
そのまま訓練場を去っていくガルド。残された二人は、何とも言えない沈黙に包まれた。
街ぶら散歩
「……で、本当に行くの?」
腕を組んだアイリスが不満げに言う。
「ガルドさんが休めって言ったし、せっかくだから街を歩こうよ」
「ふん……べ、別にいいけど。どうせ私は護衛のつもりだからね!」
そんな言い訳をしながらも、アイリスはどこか落ち着かない様子で足を踏み鳴らした。
二人は石畳の広がる街路へ出た。
市場では商人の呼び声が飛び交い、焼き立てのパンや香辛料の匂いが漂う。
子供たちが走り回り、遠くから吟遊詩人の歌声も聞こえてきた。
「わぁ……にぎやかだな」
「ま、まあ、悪くないわね。……でも! デートじゃないからね!」
「はいはい」
陽介が苦笑すると、アイリスはさらにしっぽを揺らし、顔を真っ赤にした。
休息の時間
市場を回り、雑貨屋で弓の弦を眺めたり、露店で焼き串を買って食べ歩いたり。
そんな何気ない時間が、陽介には新鮮だった。
「美味しいな、これ」
「ちょっと! 一口ちょうだい!」
アイリスが強引にかじりつき、二人の顔が近づいた瞬間――。
「~~っ!」
アイリスは慌てて離れ、耳まで真っ赤に染めた。
「こ、これは……味見よ! 別に仲良く食べてるとかじゃないから!」
「はいはい」
陽介は笑みを浮かべ、焼き串を差し出した。
「じゃあ残りもどうぞ」
「……ば、バカ」
そう呟きながらも、アイリスは残りを頬張った。
宿屋に戻って
夕暮れ。二人は宿屋に戻ってきた。
訓練場とは違う疲れが、心地よく身体に残っていた。
「……楽しかったな」「今日はさ……なんか、心の充電ができた気がする」
陽介がぽつりと言うと、アイリスは顔を赤くして睨みつけた。
「……は? なに言ってるのよ。 ただの散歩よ! デートなんかじゃないんだから!」
だがそのしっぽは小さく左右に揺れていた。
陽介はその姿を見て、心の奥が温かくなるのを感じた。
ガルドの粋な計らいで与えられた休日は、訓練とは違う意味で陽介とアイリスの距離を縮めた。
ツンデレ全開のやり取りも、確かな絆の証。




