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第22話 初めての実戦訓練

基礎訓練を終えた陽介に、次の段階が訪れる。

街の外へ出て、実際の環境で弓を扱う実戦訓練だ。

風、距離、揺れる的――自然は甘くない。

だが陽介は矢を放ち続ける。

そしてやはり、横ではアイリスが茶々を入れ続けるのだった。

街の外へ


 数日間の基礎訓練を経て、陽介はようやく次の段階に進むことになった。

 朝のギルド訓練場でガルドが宣言した。

「よし、今日からは街の外で実戦訓練だ。木の葉でも木の実でも、自然を相手に射てみろ」


 陽介は緊張と期待が入り混じった表情で頷いた。

「はい!」


 街門を抜けると、秋の気配が混じった風が吹いていた。

 遠くに見える森は深い緑に包まれ、木々の隙間から鳥の声が響く。

 街道を外れて少し歩いた場所で、ガルドが立ち止まった。


「ここならいいだろう。風の向き、光の加減、全部実戦に近い。さあ、やってみろ」


小さな的


 陽介は弓を構え、近くの木に生い茂る葉を狙った。

 風に揺れる小さな的。訓練場の大きな的とは違い、容赦なく視界から消えたり現れたりする。


「……当たるかな」

「ほら陽介ー! 三連続で的に当てたらご褒美に褒めてあげるよー!」


「ご褒美が褒めるだけ!?」

「何よ、不満? じゃあ“かっこいい”って言ってあげる!」

「……それ、意外と嬉しいかもしれない」

「ちょ、ちょっと! 今の取り消し!」


 陽介は息を整え、矢を放った。

 ――ひゅん。


 矢は葉をかすめ、地面に突き刺さった。


「惜しい!」

「惜しいって……外れは外れよ。次!」


 アイリスの冷たい言葉に、陽介は苦笑しながら次の矢をつがえる。


 二射目、三射目。矢は風に流され、枝を揺らすだけで終わった。


「陽介、葉っぱ一枚に負けてるー!」

「そんな言い方するな!」


 だが、四射目。矢が葉の中心を貫いた。

 「よしっ!」

 思わず拳を握る陽介。


「へぇ、やるじゃない」

 アイリスが素直に感嘆の声を漏らす。

 だが次の瞬間、口角を上げてにやりと笑った。

「でも今の、まぐれでしょ?」

「違うって!」


木の実を狙え


 次は木の実が的になった。枝にぶら下がり、風で揺れる小さな丸い影。

 ガルドが言う。

「動く的に当てるのは難しいが、慣れれば実戦で役立つ。やってみろ」


 陽介は集中し、矢を放つ。

 カンッ、と乾いた音を立てて木の実が地面に落ちた。


「やった!」

「おぉ、本当に当たった!」

 アイリスが手を叩きながらも、すぐに言葉を付け加える。

「でも陽介の顔、必死すぎ。目が血走ってたよ」

「いいだろ別に!」


 次々と矢を放つが、全部が命中するわけではない。

 的を外すたびにアイリスが声を上げる。

「外れたー! 今のは逆方向よ!」

「わかってる!」

「当たった! でも今の、木の実じゃなくて枝じゃん!」

「うるさい!」


 訓練場以上に厳しい環境に、陽介はすぐに汗だくになった。

 矢を放ち続け、背中に力を込めるたびに肩が悲鳴を上げる。


連射と遠距離


 さらにガルドが課題を与える。

「今度は連射だ。五本を連続で射て」


 陽介は矢を矢筒から素早く取り出し、次々と放った。

 一射、二射、三射。矢は次々と的へ飛んでいく。

 だが四射目で腕が震え、矢は大きく外れた。


「はぁっ……はぁっ……!」

「おつかれー! はい、三本は合格。二本はダメ!」

「採点方式!?」


 最後は遠距離射撃だった。百メートル先の木に吊るした小さな布を狙う。

 陽介は息を整え、弓を引く。

 矢が放たれ――布を貫いた。


「やった……!」

 達成感で胸が熱くなる。


「すごい! ……でも、あと十回中八回は外すでしょ」

「言うなぁぁ!」


 陽介はヘロヘロになりながらも、必死に矢を放ち続けた。

 日が傾く頃にはもう立っているのもやっとだった。


訓練の終わり


 「今日はここまでだ」

 ガルドの声が響く。


 陽介は地面にへたり込み、肩で息をした。

「はぁ……はぁ……」


 アイリスが隣にしゃがみ込み、タオルを渡す。

「はい、汗拭きなさいよ。泥だらけでほんとにみっともないんだから」


 「うるさいな……でも、ありがと」

 陽介はタオルで顔を拭き、苦笑した。


 アイリスはしっぽを振りながら、少しだけ優しい声で言った。

「でもさ、陽介。今日の訓練、ちゃんと成果出てたよ。……まぐれじゃない」


 陽介は目を丸くした。

「えっ、今褒めた?」

「なっ……違う! 別に褒めてない! ただの事実を言っただけ!」


 顔を赤くしてそっぽを向くアイリスに、陽介は疲れ切った顔で笑った。

木の葉や木の実を的に、自然の中で矢を放ち続けた陽介。

汗と泥にまみれ、ヘロヘロになりながらも、確かな成長を感じ取った。

茶々を入れ続けるアイリスの存在は、彼を支える大きな力でもあった。

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