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第13話 安堵と決意 ―戦いの後で―

こんばんは!

今回は初めての実戦を終えた直後の場面です。

死の恐怖から解放された安堵、仲間たちの評価、そして陽介自身の胸に芽生えた「決意」。

戦場の余韻とほっとした空気の中にも、次につながる力強さを感じてもらえると思います。

アイリスのツンデレも健在なので、ニヤリとしながら読んでね。

戦いの余韻がまだ森に残っていた。

 焦げた草の匂いと、血の鉄臭い香りが入り混じり、湿った風に乗って鼻をつく。


 倒れ伏したゴブリンたちの死骸を横目に、護衛の冒険者たちは深く息を吐き出していた。

「ふぅ……なんとか終わったな」

「大怪我したやつはいないか?」


 互いに声を掛け合い、傷の確認をする。幸い命にかかわるような怪我人は出ていない。誰もが肩を上下させながらも、生きて帰れることに安堵していた。


 その中で、陽介は剣を握ったまま動けずにいた。

 手のひらにはじっとりと汗。刃の重みが腕に食い込み、まだ震えが止まらない。

(……俺、今、本当に戦ったんだ)

 頭がぼんやりとする。現実感が薄れていく中で、鼓動だけが耳の奥でやけに大きく鳴っていた。


 そこへ、ガルドがずしりとした足取りで近づいてきた。

 分厚い肩に鎧をまとい、剣をまだ血に濡らしたまま携えたその姿は、まさしく「歴戦の戦士」だった。


「よく一人で抑えてくれたな」

 低い声が響く。

「もし後ろを抜かれていたら、馬車ごと危なかった。お前たちのおかげで助かったよ」


「い、いえ……必死だっただけです。最後は助けてもらいましたし……こちらこそ、ありがとうございます」

 陽介は肩で息をしながら、慌てて頭を下げた。剣を握る手がまだ細かく震えているのを、必死に隠した。


 すると、横からフィオラが馬を寄せ、口を開いた。

「挟み撃ちなんて、普通なら死人が出てもおかしくないのよ。あんたたち、よく立って戦えたじゃない」


「……それは全部、アイリスのおかげです」

 陽介が隣に立つ少女をちらりと見ると、アイリスはぷいと顔を背けた。


「べ、別に。私は当たり前のことを言っただけよ! 弱点を教えただけで、戦ったのは陽介じゃない」

 ぶんぶんと揺れるしっぽ。耳まで赤く染まっているのを、周りの冒険者たちは思わずくすりと笑った。


「ふふ、仲の良いコンビだな」

 一人が冗談めかして言うと、陽介は顔を真っ赤にして言葉を詰まらせる。


「な、仲良くなんか……!」

「いや、仲いいよね」

 フィオラがさらりと言葉を重ねると、アイリスはさらに真っ赤になり、しっぽをばたばたと叩きつけた。


 そんな光景を見て、ガルドもふっと笑みを浮かべる。

「よし、休憩だ。水を飲んで体勢を整えろ。一息ついたら出発するぞ!」


「了解!」

 護衛たちはそれぞれ腰を下ろし、皮袋の水を回し飲みする。冷たい水が喉を潤すたび、体の芯まで疲労が溶けていく気がした。


 馬たちも緊張から解き放たれたように、草を噛んでいる。

 昼の陽射しが森の隙間から差し込み、地面にまだら模様を描いていた。


 陽介は剣を膝の上に置き、深く深呼吸をした。

(怖かった……ほんとに怖かった。あと少しで死んでたかもしれないのに……俺、生きてる)


 胸の奥がじんじんと熱い。

 怖さと同時に、何かが燃え上がる感覚があった。


(もっと強くならないと。この世界で生き抜くには……! ただ守られるだけじゃ、ダメだ!)


 無意識に拳を握りしめていた。


 横でアイリスがちらりと視線を寄こす。

 彼女もまだ顔色は青ざめているが、耳は赤く、しっぽは落ち着きなく揺れていた。


「……陽介、無茶はしないでよ」

 小さな声が届く。


「うん、わかってる。でも、守れるようになりたいんだ」

 陽介は素直に答えた。


 アイリスは数秒黙り、目を逸らして小さく吐き捨てる。

「……バカ」


 だが、その頬は赤く染まり、耳もぴくぴくと震えていた。


 商隊の仲間たちは、そんな二人を温かい目で見守っていた。

 戦いの緊張から解放された安堵の中、草原に小さな笑い声が広がっていく。


 その空気の中で、陽介はただ一つ心に誓った。


(――次は、もっと冷静に。もっと強く。必ず、守る)

ここまで読んでくれてありがとう!

第13話は「戦闘後の安堵と決意」。

陽介の震えや疲労、仲間たちの評価、そしてアイリスのツンデレなやり取りを通して、少しずつ成長への階段を上っていく姿を描きました。


次回は商隊の再出発と、その道中での「仲間との交流」。

戦いを経て生まれた絆が、少しずつ形になっていきます。

どうぞお楽しみに!✨

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