表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/8

第1話

「おぼっちゃん、お目覚めですか?」


 生まれてこの方、“おぼっちゃん”呼ばわりされたことなんてなかった気がする。だが同時に、もうひとりの自分が「それは当たり前だ」と思っているような感覚もある。

 しかも、この言葉は日本語でも英語でも韓国語でもない、聞いたことのない発音なのに、なぜか意味が頭に入ってくる。


ここはどこだ? お前はいったい誰だ?

問いかけようとしたが、声にはならず、喉の奥から出たのはただの唸り声だった。


「気が付いたか、テクシウィトル。気分はどうだ?」


今度は頭に羽飾りをまとった、半裸でいかつい中年男が入ってきてそう言う。

誰だ・・・いや、俺はこの男を知っている。俺の父親だ!


ここはどこだ? どうして俺はここにいるんだ?

その問いを口に出せず、代わりに俺はかすれた声で答えた。

「頭がまだ痛いですが、だいじょうぶです」


父は大きく息をつき、安堵の色を浮かべた。

日本では見たこともない派手な鳥の羽飾りを頭で揺らしながら、彼は胸の前で両手を合わせると小さく祈りを捧げる。


「そうか、よかった。イシュトリルトンの慈悲に感謝しないとな。石畳で頭を打ったと聞いたときは、もうミクトランテクートリのもとに行ったのかと覚悟したが……まったく、奇跡としか言いようがない」


壁際に立っていたおばちゃんも、うつむいて胸の前で両手を合わせている。

「無理をしてはいけない。今日と明日はもう何もしなくていいから、休んでいなさい」

父はそう告げると、せわしなく部屋を出ていった。おばちゃんも一礼して去っていく。


(イシュトリ? ミクトラン? それって・・・神様の名前なのか?)

聞き慣れない言葉が頭の中をぐるぐる巡る。

まだ収まらない頭痛と混乱の中、俺は昨夜いったい何があったのかを、必死で思い出そうとしていた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ