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60話 後日譚


 俺は日常に戻った。


 今はジラール、オルマと馴染みのカフェで談話をしている。

 オルマがくたびれた顔をしてぼやく。

「指名手配犯が一躍、国の英雄かー。わたし達も頑張ったんだけどなー」

 ジラールも舌打ちして、同意する。

「全くワリに合わねぇ。まぁこうやって話せるようになって安心したぜ」

 オルマが紅茶を上手そうに飲みながら、屈託ない笑顔で返す。

「ホント、ホントー。開拓地の問題も解決したしねー」


 オルマの言う通り、ゴバ草原の開拓問題は解決に向かいそうだ。

 この国の宰相になったエルドラの活躍もあり、先住民とのトラブルは無くなりつつあった。

 何でも融和政策として、先住民にベガスの整理区画に住居を提供するそうだ。

 こないだなんてカジノのスロットの台をはしゃいで叩いていやがった先住民達がいたな。


 住めば都とはよく言ったものだ。


 ジラールがオルマに尋ねる。

「あの辛気臭そうな兄ちゃんはどうしてんだ?」

 オルマが言葉に迷いながら答える。

「何でもエルドラさんの手伝いでぼーえーせーむかんってところで働いてるみたい」


 リューは元々エルドラに雇用されていたらしい。

 今回の件は全てエルドラの指示で俺達や街を陰ながら支えてくれた。


 リューの少年兵達は妙な魔道具を捨て、ドラゴの孤児院に引き取られたらしい。

 スラム街も姿を変え、活気付いている。

 あそこにいる少年や少女達もドラゴや市長となったホルンが作った『学校』と言ったところにいる。


 そこで文字を教わり、三食昼寝付きの生活を送ってるらしい。

 羨ましい限りだ。


 俺が未だにアーペルに説教されながら代筆のバイトをしているというのに。


 オルマが思いついたような顔して、ミュラーに話しかける。

「今度クロエも誘って、お姫様の戴冠式に行こうよー。どうせミュラーは招待状貰ってるんでしょー?」

「興味ないな、退屈なだけだし、俺は行かん」

 こないだ破り捨てた紙切れのことか。

 正直数年前のトラウマが原因で城に行くのは抵抗がある。

 しかし、焼け落ちた城を、まさか一月で再建するとは恐ろしいな。

 ロゼよりもエルドラの方がある意味怖い。

 有能な人材が国の表舞台に出た証拠だな。


 この国も暫くは安定しそうだ。


 ジラールがニヤニヤしながら話しかけてくる。

「で、ミュラー、報奨金はどうすんだよ? 金貨10万枚も貰ったんだろ? 少しは分けろ」

 俺は即答で返事をした。


「全部使った」


 俺は家を買った。故郷の実家にも劣らないぐらいデカい屋敷を買った。

 ルカと一緒に暮らすために。

 そして二人に招待状を手渡す。

 ジラールとオルマは互いに顔を合わせる。

 そしてミュラーを糾弾する。

「嫌がらせか? 俺達が文字読めないの知ってるだろ?」


 そうだった。

 コイツらは馬鹿だった。


 俺が仕方なく、招待状の内容を伝える。

「今度、結納をする、ルカとな。派手にパーティーやるぞ」


 ルカの身請けの話自体が、俺を動かすためにエルドラが仕向けた話だったらしい。

 俺は大量の金貨を使って、あの高級娼館の女達を解放した。

 当然ルカもだ。

 互いに自由な身となって、気持ちを確かめ合い、一緒に生きていくことを誓い合った。

 実家にも招待状は送ったが、アジムートは呼ばなかった。

 まだ恨んでそうだからな。


 まぁ一件落着だ。

 街の平和も戻った。

 俺も幸せを手にした。


 三人で和やかに談話しているところに、クロエが呼びかけてきた。

 元々幸薄いコイツは今回の件で全く存在感がなくなったな。

 理由を聞くと、

「あなたがしでかしたことでなんでわざわざ私が尻ぬぐいしなきゃいけないの?」

 とかほざきやがった。

 冷たい奴だ、とも思っただ、まぁこいつに借りを作るのは気分が悪い。

 クロエが大切なことを俺達三人に伝える。

「三人とも、ブシュロンの召集よ。草原の森でブラキオサウルスの群れが現れたんだって」


 俺のハンター除名処分は取消された。


 この前も狩りに行った。

 これは正直助かる。

 怪しい口入れ屋で貰った汚れ仕事でルカを食わすのは正直気分が悪い。


 こうして三匹の狼達はハンターとして復活した。


 蒼き狼、ミュラー。 


 彼の英雄物語は始まったばかりなのである。


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