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122話 終焉、ミュラーの章~英雄の前日譚~

ついに、アウトローシリーズ第一弾、フィナーレです!


 ミュラーはカインと共に、世界中に散らばる真理の欠片を探し始めた。

 

 欠片を持った者の宿命として。

 強過ぎる欠片の力はバリオスのように、その力で災いをもたらす。


 そして世界の深淵に隠されていた遺跡の捜索、探検の任務についた。


 すでに世界は変わりつつあった。


 遺跡から発見された古代の魔法具で国を興した者も現れた。

 人の禁忌に触れたその存在は回収しなくてはならない。


 そしてミュラーは遺跡を調査する必要があった。

 その遺跡にはすでに忘れられた古代民族の秘術が眠っていた。


 遺跡の探索はミュラーの好奇心を大いに刺激した。

 まるで青春時代にかけがえのない仲間と分かち合った冒険心をくすぐった。

 そして数多の遺跡を捜索し、立ちはだかる障害を悉く打ち破っていった。


 国家間の紛争すら単独で打破し、世界中に蠢く闇に潜める魑魅魍魎の猛者達を屠った。


 ミュラーの、その功績、その強大な力の前に、乱れた世界は秩序を取り戻した。


 そしていつからか、ミュラーも英雄と謳われるようになる。


 蒼き狼のミュラー。


 その英雄は歴代最強と呼ばれるようになった。


 しかし人々は知らない。

 ミュラーが世界の裏にいる委員会に所属していることを。

 ミュラーが来るべき時のために動いていることを。

 これから待ち受ける数奇な運命と出逢いを。


 そして来るべき時のために自身の力だけでは乗り越えられないことをミュラーは自覚していた。


 新たな英雄の存在が必要不可欠だと悟った。

 これからの時代の英雄の存在が未来を変えるために不可欠だと。

 そして自分は新たな英雄の導き手となるべき運命だと。


 自分は世界の理の存在であると自覚していた。


 自分は根っからのアウトローなのだと。


 これから出逢う存在も自分と同じ無法者かもしれない。


 なら俺は無法者アウトローの英雄になる。





 そしていくつもの季節が流れていった。


 ベガスの片隅にある海辺の屋敷、その奥にある寝室のベッドでミュラーは目を覚ました。

 傍らには最愛の伴侶、ルカがあどけない寝顔をして眠っていた。

 青髪の寝癖を直しながら、寝ているルカを起こさないように、ベッドから身を起こす。

 二つの瞳からは涙の跡があったことに気づく。

 その涙の正体は来るべき時への、不安、恐怖からだ。

 静かに起きたつもりだったが子供達を起こしてしまった。

 子供と言っても、長女のドルチェは16歳。

 長男のヴィータは15歳。

 次女のメルシェは14歳。

 立派な大人に育っていた。

 三人ともミュラーと同じ青髪を靡かせ、朝の光に照らされていた。


 眩しかった。

 常夏の陽の光のせいではない。

 自分が命を紡いでいった証明がそこにはあった。

 気づいたらルカも目を覚ましていた。


 ミュラーは罰の悪そうな顔をしてから、家族五人で朝食をとった。


 食卓を囲む家族。

 その中にミュラーはいた。

 潮風の薫りが家族を優しく包む。

 ドルチェがミュラーに尋ねた。

「父様、今度の仕事はいつ帰ってこられるんですか?」

 ミュラーは水を飲み込み、静かに答える。

「今回は少し時間がかかるかもしれないな……」

 メルシェが悪戯っぽく言う。

「そんなこと言って、夕方には帰ってくるんでしょー? お父様は家が大好きだもんね」

 ミュラーを除いた四人の家族がクスクスと笑う。

 その光景を見て、ミュラーは固く誓う。


 かけがえのないものを守るために、俺は運命に打ち勝つ。

 問題ない。

 勝つ算段はついている。


 そしてミュラーは旅に出かける。

 熱い想いを込めて。

 遠い記憶にしまった者達に誓いを立てて、歩み出す。


 ベガスの街並みを遠くから見渡した。


 全てはここから始まったな。


 昔を思い出し、ミュラーは苦笑いをしながら、遠い旅路へと踏み出した。

 

 以前撮った仲間たちとの写真を大事に胸ポケットにしまう。

 

 これからミュラーにどんな運命が、物語が始まるのか、それはまた別の物語へと編み込まれていく。


 これは一人の英雄の前日譚に過ぎない。



 物語はここから今、動き出したのだ。


 ここまで読んで下さった読者様、本当にありがとうございます。

 

 しかし残念ながら、ミュラーの物語はここからが始まりなのです。


 これは一人の英雄のエピソードの一つであり、大きな物語の序章です。

 

 アウトローシリーズはまだまだ続きがあります。


 次の英雄の物語が貴方を待ってます。

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