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121話 決戦、バリオス

 最凶の存在バリオス、ミュラーは因縁に終止符を打つため、再び立ち向かう。

 

 大気が揺らぎ、大地が地響きを起こす。


 バリオスの周囲の空間だけが、揺らいでいた。

 青白い炎によって。


 木々が生い茂る山々が一瞬で焦土と化す。


 バリオスの怒りは凄まじかった。

 その憤怒の炎に周囲は焼き尽くされる。


 空中で相対するミュラーは至って冷静だった。

 そして氷のように冷たい目でバリオスを睨みつける。


 こいつが、ブシュロンを、アーペルを、フェンディを、そしてジラールを殺した。

 俺からかけがえのないものを奪った。

 簒奪者め、持たざる者の報いを受けろ。


 そして決意を込めた死の宣告をミュラーは告げる。

「今度は俺が貴様の全てを奪う」


 怒りで我を忘れているバリオスにミュラーの言葉は届かなかった。


 ただ激しい感情のままにバリオスはぶつぶつと呪詛を呟く。

「……いつもそうだ。いつの時も人間どもが俺の平穏を壊す……。……燃やし尽くしてやる。……何もかも燃やす……。……モヤスモヤスモヤスモヤスモヤスモヤスモヤスモヤスモヤスモヤスモヤスモヤスモヤスモヤスモヤスモヤスモヤスモヤスモヤスモヤスモヤスモヤスモヤスモヤスモヤスモヤスヤスヤスヤスヤス!!!!!!!!!!!!!!!!」


 するとバリオスは手を振りかざし、掌印を結ぶ。


「流炎焦獄」


 とっさにミュラーは空中へ逃げようと飛行魔法を展開した。

 しかし魔法は発動しているのに、空へ翔けられない。

 まるで縛られているかのように、その場から逃れられないでいた。

 瞬時に(タオ)を眼球に集中させ、バリオスの焦熱魔法を見極める。


 ミュラーは捉えることができた。


 そこにとてつもない磁場が生成されていることを。

 バリオスが扱う魔法を誤解していたことを。

 バリオスは炎の魔法を使用しているのではない。

 熱だ。

 しかも原子レベルまで融合させた、超高温の熱の塊。

 それがバリオスの魔法の正体だ。


 ミュラーの観察は当たっていた。


 本来火炎系統の魔法は、空気中の酸素が高温の水素や炭素が、化学反応を起こして発生させるものだ。


 だがバリオスの焦熱魔法は違う。


 熱そのものを操る。


 水素がヘリウムになる核融合反応が発生されていた。

 その超越した高温と高圧で生じた磁場が青白く光り、その磁力によってミュラーの身体を縛っていた。


 その発生する温度は摂氏5000度。

 自然界でこの高温に耐えられる物質は存在しない。

 全ての存在が融解される。


 その収束された熱の光が巨大な柱となって、ミュラーの身を包み、そびえる山脈ごと灰燼と化す。


 そして大気の気温は上昇し、真夏のように変化していく。

 七大聖魔、バリオスは気候さえ変えられる存在だ。

 その力によって数多の英雄や超越者を退けていった。


 しかしバリオスの怒りは収まらなかった。

 青白い炎を撒き散らしながら憤慨し、叫び声を上げた。


「何故だ!? 何故そんな涼しい顔しやがる!? 何故生きているんだ!?」


 そうミュラーは無事だった。

 それどころか、衣服に焦げすらついてない。

 氷のように冷たい眼光を取り乱すバリオスに向けていた。


 ミュラーが習得した魔法。

 縮退葬法は創り出した空間で圧力を自在に操作する。

 ミュラーの操る魔法の圧力の前では全てが引き寄せられ、そして分散される。


 縮退葬法を持ってしまえばミュラーに触れることは許されない。

 それがどんな存在であってもだ。


 すかさず空中にいたミュラーは両手で印を結び、結界を発動させ、呟く。


「空間錬成、縮退葬法零式、『虚の章』。……自分の終わりを理解しろ……!」


 ミュラーは自身の空間錬成に不満を持っていた。

 それは場所を選ばなければならなかったからだ。

 ミュラーの視界に映る全てが結界に閉じ込められる。

 味方や無関係な人々がいる街中で扱えないデメリットがあったからだ。

 しかしここは人里離れた山脈。

 ミュラーは存分に自身の力を十分に発揮できていた。


 そしてバリオスはここでミュラーと雌雄を決する時点で敗れていた。


 ミュラーの空間錬成は容赦がない。

 ミュラーの視界に入る全ての存在は圧縮される。

 人が深海で生きることができないように。

 地上の生命と呼べる存在はミュラーの空間錬成の前では絶命するしかない。


 膨大な圧力がバリオスの全身に襲いかかる。

 グギンと嫌な音を響かせながら、バリオスの全身の骨は砕け、口から臓腑を吐き、その身が限界まで凝縮されていく。

 絶叫するいとまもなく、バリオスは息絶えた。


 そしてミュラーはバリオスの吐き出した内臓を弄り、取り出す。


 真理の欠片。


 バリオスの膨大な極大魔法が発動可能だったのは真理の欠片の一つ、増殖を所持していたからだ。

 カインは真理の欠片の所有者の一人を知っていた。

 しかし、その強大な力を前に迂闊に手を出さないでいた。

 だが自身を超える存在、ミュラーが現れたことにより勝利の算段がついた。

 敢えてミュラーが有利な状況を作りだし、バリオスを狩る。

 全てはカインの手のひらの上であった。


 そしてミュラーはその真理の欠片、増殖を身体に取り込んだ。

 ミュラーの魔法も万能ではない。

 余りに強大なミュラーの魔法はその消耗も激しい。

 だが、今真理の欠片を取り込み、増殖の力を自身の魔力の源泉とした。

 バリオスは増殖によって膨大な魔法を生み出した。

 だがミュラーは自身の魔法が無限に増殖できるように利用した。

 今のミュラーは魔力が尽きることなく、縮退葬法を自在に操ることができる。


 もはやミュラーの力の前に敵うものは存在しない。


 ミュラーは現代最強の魔術師、英雄となったのだ。


 かくしてミュラーは逸脱者となる。


 ミュラーは寂しい顔をして、小さく呟く。


「……仇はとったぞ、ジラール……」

 構想段階でミュラーを最強に強くする予定でしたが、能力は考えてませんでした。

 YouTubeの科学宇宙動画を観て思いつきましたww

 理系の専門知識がある方、あまりツッコまないで下さい。


 とりあえず、自分が考える中で一番の天井を作りました。

 バリオスがあっけない……、という読者も思うかもしれませんが、彼も十分チートです。

 

 

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