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ザシュッ


バタッ


地面に広がる鮮血。

自分の服がどんどん濡れていくのが感覚で分かった。

命が流れていくのが分かった。


「ハァ...…ハァ...…」


「お前に罪があったわけではない。

ただ、虫の居所が悪い俺の前に人気の無い路地を1人で歩いているお前がいた。それがお前が死ぬ理由だ。」

「ハハッ……ありがとう。」

「何故礼を言う。」

「ハァ...…ハァ...…

この世界は…私には…生き辛かった…

ずっと…幕を…引きたかった……でも…自分で引いてしまえば…残された人に…感じなくていい…責任を…感じさせてしまうかもしれない……」

「感じなくていい責任?」

「死んでしまう程…悩んでいたことに……どうして…気付いてあげられなかったのだろう…もっと…話を聞いていればよかった……って……ハァ...…ハァ...…

もし…私の…大切な人が…自分で自分を…殺してしまったら…私はそう思ってしまう……

そんな思いは…してほしくない……」

「ほう。だから誰かに殺してほしかったと?」

「そう……事故でもよかった……

他殺か…事故であれば……悲しむだけで済むと思うから……悲しませてしまうのは……申し訳ないけど……

もしかしたら…悲しんで…くれる人すら…いないかも知れないけど…ハハッ……」


どんどん流れていく。不思議と痛みは感じない。


「この時が来るのを…ずっと…待ってたの……

だから……ありがとう……」


何も思い残すことはないと思っていたのに、何故涙が出るんだろう。

瞼が重い。私はゆっくり目を閉じた。


「……」



目の前に広がる情景を何の感情もなく、ただ見つめる男がいた。

男はこれまで何度も惨い景色を見てきた、作り出してきた殺し屋だった。

血の海に1人の女が倒れているくらいでは何の感情も抱かないのだろう。


"この世界は…私には…生き辛かった…"


プルルルッ


「もしもし、俺だ。今からそちらに向かう。」



死んだ後ってどんな感じなんだろうと思っていたけど、意外と心は穏やかだ。

とても暖かい。高級羽毛布団に包まれているみたい。


「……ん?」


ピッ…ピッ…ピッ…


私は横になっていた。

ここはどこだろう。

天国?地獄?死後の世界?


ガラガラッ


コツ…コツ…コツ…


誰か近づいてくる。


「目が覚めたか。」

「あ、あなたは...」


現れたのは私を殺した人だった。


「あなたも死んだんですか?」

「俺は死んでいない。お前もな。」

「え?」

「単刀直入に言う。俺と結婚してくれ。」

「は?」


私を殺した人に求婚されている理由が分からないし、そもそも動けず、横になっている状態の人に対して言うことではないだろう。

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