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魔女と狼は月下で笑う  作者: 庄司 篁
実月 試験と転機
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第47話 第二回評議会

 休閑週が明け、再び学校が始まった。

 皆各々休暇を楽しみ、良いリフレッシュができたようだ。

 そして、時は少し流れて月が替わり、世は実月となった。青い実がなり、収穫の目途が立つ時期である。

 フロスティアの気候は寒さや暑さに片寄っているわけではないが、この時期は日差しが肌に刺さる。

 制服も夏仕様で涼しく加工されており、目に新しい。


 ここからの時期は、さらに行事で忙しくなる。

 第二回の基幹科目総合テストに加え、競技大会、文化・芸術交流会、その間にはまた第三回基幹科目総合テストが挟まる。

 来月は収穫が盛んな時期なので、三日ほど平日に休みが設けられているが、それ以外は常に何かのイベントに追われることになる。


 まずは、第二回の基幹科目総合テスト――と、その前に、生徒会から各サロンに向けて、お知らせの手紙が回ってきた。


「第二回評議会ですか」


 今日はサロン集会で次の試験対策についての話をしようと思っていたのだが、思いがけず別の議題ができてしまった。

 どうやら試験週間が始まる前に、第二回の評議会が開催されるらしい。


「今回は、来月に行われる競技大会についての話をするみたいね。前みたいに、議論の時間は設けられていないみたい」

「随分と早いですね。まだテストも終わっていないというのに」


 他の華月会メンバーが談笑をする中、エリーヌはベネディクトと一緒に、評議会について話している。


「テストが終わってすぐ、競技大会の準備期間があるものね」

「このタイミングしかない、ということですか」


 言わずもがな、試験は大事な"得点"だ。以前と同じように、今後の派閥争いにおいて重要となる。

 そして、競技大会も同じく重要なイベントの一つである。

 基幹科目とは別の必修の科目である『教養科目』。それをメインにし、生徒間で競技を行う。

 学校内で完結するイベントではあるが、中等部・高等部共に同日に開催されるため、それなりに大規模なイベントである。

 だからこそ、事前の準備をするため、あるいは事前に説明の機会を設けるために、評議会が開かれるようだ。


「『競技大会』……今まで行われてきたものを鑑みると、サロン単位でも色々と話し合う必要がありそうですね」


 早いもので、主要なイベントの数も折り返しとなるころだ。

 そんな中で行われる競技大会には、いくつもの思惑が絡み合い、ぶつかり合うことだろう。

 念入りな準備が必要だ。


「そうね。でもまずは、第二回の試験について考えないと。目先のことから、順番に手を付けていきましょう」

「はい、エリーヌ様」


 そうして二人は、試験について話し合うのだった。





***






「ではこれより、第二回評議会を始めます。まず始めに――」


 生徒会長の涼やかな声と共に、評議会が始まった。

 参加している面子に特に変わりはない。

 今回は生徒会からの一方的な説明だけということなので、クロエとも事前に話し合うことはなかった。

 なので皆、静かに話を聞いている。


「次に、競技大会について説明をします。マリエル、準備を」

「はい」


 生徒会長は挨拶から競技大会についての話題に変えると、副会長の少女に声を掛けた。

 彼女は教師陣とは違いどこかたどたどしさを持ちつつも、会議室にある黒板に文字を羅列させた。


「今年度の競技大会は例年同様、この三競技にて行われることに決定いたしました」


 文字を書き終えたところで、生徒会長が話を進める。


「また、ルールも例年通りになります。皆様であればご存じかと思いますが、サロンごとに行う競技もありますので、事前にサロン集会での説明をお願いします」


 周年記念といって、何か特別なことをするわけではないらしい。

 競技大会は安全面に考慮しなくてはいけないこともある。イレギュラーな変更にはイレギュラーな事件がつきものなので、妥当な判断だろう。


「天候不良の場合には、予備日として以下の日を競技大会といたします。もし、その日も行えない場合は、また別日を用意しますので、その都度連絡をさせていただきます」


 密なスケジュールの中でも、競技大会は必ず行われる。

 それだけ重要な行事ということは、周知の事実だ。


「また、準備期間中は通常の時間割を変更し、教養科目の時間を全学年増やします。変更する時間は学年によって異なりますので、注意してください」


 生徒会長がそう言うと、副会長が黒板に一枚の大きな紙を張り付けた。

 学年ごとに、通常授業からの変更点が記載されている。

 

「最終学年である皆様は、まだ入学して間もない一年生が変更に混乱しないよう、サロン集会などで師事してくださると幸いです。ご協力の程、よろしくお願いいたします」


 生徒会長はそう言って、小さく頭を下げた。


「では次に、競技大会における注意事項についてです」


 そう言うと、彼女は穏やかな顔から少し鋭い表情へと顔色を変えた。


「昨年度、剣術(フェンシング)に使用される物品が、生徒により改造されるという事件が発生いたしました」


 その言葉を聞き、一部の生徒たちが顔を見合わせた。


「また他にも、必要物品の入れ替え、又は細工・破壊等が行われました」


 これこそが、競技大会で混ざり合う思惑の一つ。

 要は、勝つための不正だ。


「これらは公平性を失う行為であり、事故にもつながる危険な行為です。生徒会は、これらの行為をした生徒に、厳正なる処罰を与えます」


 周囲が少し騒めく。

 視界に入る限りの、鳥蝶会を筆頭にした過激派のサロンの者達は、皆冷ややかな表情だ。

 それに対し、風紀会に近い者達は、皆鋭い表情をしている。


「もし、そのような行為を発見、またはそれに連なる証拠を発見いたしましたら、生徒会への報告をお願いします。急を要する場合は、緊急投書をしていただいても構いません」


 これが、彼女たちの中立としての在り方だ。

 見つけたら対応するが、自ら見つける気はないと言っているようなものである。


「他にも、規則に反する不正等見つけられましたら、生徒会まで報告をお願いします」


 不正、不正の通報、八百長。勝つための策はいくらでも考えることができる。


「では、最後に。しばらく暑い時期が続くと思われます。体調管理はしっかり――」


 生徒会長により、締めの挨拶が行われ、第二回の評議会は終わりへと向かう。


(はてさて、どうなるかしら)


 試験に大会。荒波が立ちそうだと、エリーヌは今後について考えるのだった。

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