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第5話 イヴとの再会

 

 カサンドラは第2の地球に着いてからは、龍昂爺さんの家から、勤務地の病院に通っている。連合軍が開いている病院である。カサンドラの親類で癒し能力のある、日向一家の医師が数多く居る事が分かった。彼らの影響でカサンドラの癒し能力は安定してきた。

 龍昂爺さんは、過去が変わる前から、崋山には医師になって欲しかったそうで、現状に満足していると言っていた。とは言っても、気がかりは環の行方である。タイムマシンに乗って行ってしまったのは、環が22歳の時だったらしい。その時間と同じになるのは、どうやらカサンドラが39歳の時で、あと4年後だ。環はそれまでは、時間の狭間に居るのかも知れないらしい。

 カサンドラとしては、もし環が此処に戻って来たとしたら、どんな態度でいれば良いのか分からなかった。薄情な自分だと思う。前々から環に対して薄情だったと思えるし、どうしようもないのかもしれない。そんな事をうつうつと考えながら過ごしていたカサンドラに、衝撃的な展開が起った。

 いつもどおりの病院からの帰り道、カサンドラの前にギョッとする人物が立ち塞がった。

 忘れもしない、黒歴史の神崎イヴの登場である。

「あんた、あたしの前にどうしてのこのこ現れるのさ」

 驚いて、思わず敵意の言葉が出て来たカサンドラである。しかしイヴの方は、以外にも気弱な物言いである。

「そうよね、きっとあんたはあたしを嫌っていると思っていた。嫌われそうな事ばかりしていたものね。でも、あたしにはあんたしか頼れる奴は居ないんだ。だからお願い、双市朗を助けて」

「双市朗がどうしたって」

「連合軍と敵対している銀河の誰かに拉致されたんだ。あいつは連合軍向けの武器の部品メーカーの社長をしているんだけど、あいつ、最近新人類っぽくなって、やけに利口な事をし出して、敵にさらわれたんだ。何かすごいアイデアを思いついて、製品化するつもりでいたらしくて、敵に知られて捕まったそうなんだ。副社長があたしに知らせて来た。彼、あたしが新人類なのを知っていて、助けに行けって言うんだけど。無理だって言うのに。でも本当は助けに行きたいんだ。だから一緒に行ってくれない」

「そう言う事、あたしに言うより、第3銀河の司令官に言ったら」

「司令官のカイ・メイソンって、あんたの従弟でしょ」

「えぇっ、そうなんだ。あ、そう言えばそんな話爺さんしていたかな。忘れていた。あまり色々言われたから」

「あんた、言われる迄知らなかったとか?」

「付き合いは今まで無かったんだ、最近こっちに越してきたから」

「いとこ同士のくせに会った事も無いの」

「悪い?こっちにも事情があってね」

「そんなあ、きっと優遇してくれると思ったのに。酷い」

「そんな事、あたしに言う筋合いがあんたにあるって言うの。恥知らず」

「酷い、あたしがあんたに何したって言うのよ」

「何したとは何よ。あたしから双市朗を奪っといて。酷いはこっちのセリフさね」

「あ、やっぱり誤解している。奪ってなんかないもん。あたしと双市朗は兄弟みたいな従兄妹でさ。あいつが、天使みたいなのに気に入られて、あんたの事よ。どうかなりそうとか言い出すから、付き合いきれないとか言い出すから、別れる手伝いしたんだ。あたしとあいつはパートナーって気持なんかにはならないんだ。言わば家族なの」

「双市朗は、始めからあたしとは付き合いたくなかったって事」

 ショックで呆然となるカサンドラ。

「また誤解しそうな事言っちゃった。違うんだ。嫌いとかじゃないの、あんたが美しすぎてあいつが自分で、釣り合わないって思っていたんだよ。とてもお似合いとは言えない感じって言うか、側に居たら、自分が自分で無くなりそうとか、そんなこと言って悩んでいたの。だからあたしが、あんたに付き合うなって話付けようと思ったけど、ちょっと無理だった見たいね」

「あいつが、自分に自信が無かったって言う事なの。敵に捕まるくらい利口なくせに」

「そう言う事なの。分かってくれたんだね。だから、あいつを助けに行きたい訳も分かってくれた?」

「分かったけど、そういうの、あたしには無理だし、従兄弟とも会った事ないんだ。付き合い無い。だから役に立てそうもない。ごめんね。不甲斐なくて」

「うえーん、どうしよう」

 イヴは泣き出すし、カサンドラも泣こうとしたその時、龍昂から、カサンドラに初めて、では無かったらしいが、変化後初めてコンタクトが来た。

『おいおい、カサンドラ。お前は忘れている様だが、カイ達はお前を覚えているし、双市朗も知っている。前は友達だったんだよ。きっと助けるから、イヴを連れて家に戻っておいで。泣く必要は無いって言っておやり』

 カサンドラはあっけにとられて、コンタクトを終えると、ぼうっとしながら、

「イヴ、何だか、司令官は優遇してくれるらしい感じ。助けに行ってくれそうよ。あたしのお爺ちゃんがそう言うの。一緒に帰っておいでって。だから、行こか」

「えっ」

 半信半疑のイヴの手を引いて、ぼうっと家に戻るカサンドラだった。勝手に頭で会話したショックで放心状態のまま、そろそろと歩き出すカサンドラ。イヴは思わず懸念を言う。

「ところで、カサンドラ。最近あのTシャツ着た事ある?」

 はっとする、カサンドラ。

「しまった。全部捨てちゃったよ。ここにも店はあるけど、売っているかな。と言うより、今着て、効き目あるかな。あたしは行くのは無理と違う?」

 気の利いたイヴはネットで検索しだした。

「ここでも買えるよ、カサンドラ。あ、でも、サイズ合うかな。子供用しかここにはない。大人用のSじゃないと、不味くないかな」

 すると、また爺さんからコンタクト、

『家にあるよ。アンママが記念にとっておいたのを私がもらったんだ。良かったね。ママが物持ちの良い人で。こんな日が来るかもと思っていたんだねぇ』

「お爺ちゃんが家にあるって言っているよ」

 二人で家に着くと、イヴは最初にカサンドラが龍昂の家で感じたのと同じように、

「ええっと、あたしどうしちゃったのかな。他に忘れ物有ったかな」

 と言い出した。

 カサンドラは、

「あたしのお爺ちゃんが、きっと思い出させてくれるよ」

 と言いながら、居間に入るように促していると、そこに子分さん達が現れた。するとイヴは、

「あっ。崋山の子分だ」

 と叫んだ。カサンドラは自分より記憶力の良いイヴに、少し嫉妬を感じた。すると、その内の1人が、

 [癒しの力です~カサンドラ様は力が増しておいでです~]

 何故か何と言っているか理解出来てしまった。カサンドラが驚いていると、

 [崋山様の子分であったわたくしめは~~この世界では~カサンドラ様の子分であります~~なんなりと申し付けてくださいませ~~カサンドラ様のお気持ちに沿う事は~わたくしめの生き甲斐でございます~~]

 イヴは、

「ちょっと、ちょっと、カサンドラ。この人を連れて行けば百人力と違う?」

「そうみたい。でもあたしも行かなきゃダメなの?カイ達が行くんじゃだめ?」


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