第3話 変化
環とジュディは元圭のズーの居場所を探そうと、辺りを見回していると、ジュディは、
「本人が来た」
と言うので、その第13銀河星人が元圭と環にも分かった。
何と、彼は銃を構えたが、環は素早くノックダウンの声を出すと、彼はあっけなく倒れた。
「誰かに見つかる前に、タイムマシンに乗せよう」
ジュディは素早く元圭を抱えてタイムマシンの方へ走った。還は圭の皮を拾ってジュディの後を追った。出来るだけ変化をさせないためには、こんなものを置いては戻れない。
二人は慌ててタイムマシンに乗って、ジュディはボタンを押そうとすると、元圭が意外と早く気が付いた。
「お前ら、こんなことは出来ないぞ。過去の人を未来に連れてはいけない。禁断の事例だ。俺を殺してここに捨てていけ。それしか出来ない」
そう言われては、環とジュディは顔を見合わせるしかなかった。
「ジュディ、それぐらいの覚悟はしておけ。ああいう事を環に吹聴するくらいならな。やる気が無いなら、こっちが行くぞ。環、ノックダウンは俺には2度は効かない。眠らせるのももう効かない。技は見切ったんだ」
いよいよ、お手上げとなった二人である。
環は、
「じゃあ、元もどきの圭はここに留まってよ。もし、戦争が無くならずに連合軍が負けていたら、あんたは私に恨まれることになる。もし、戦争になって居なかったら、あんたを見直してやるよ。きっと、契約どうりにならなかったって事は、あんたが頑張ったって事だろうからね」
「あまり買い被らないで欲しいな」
そう言いながら、もどきのズーは光の外に出て行った。
「ごめん、環。あたしが殺せばよかったのに」
「そんな事できなかったと思うよ。ジュディは、あいつに敵いっこなかったはず。こうするしかなかったんだから。謝らないでね。ジュディ、と言うよりシャーク。ずっと友達だね。二人ぼっちになったね」
「うん、ずっと友達でいよう」
状況が全て変わってしまった地球のある日の事。
カサンドラ。
ズーム社は普通の情報管理会社のままであり、彼女はさらわれもせず、崋山の様な新人類としての能力の覚醒も無く、30歳の大台を迎えた今日この頃である。
癒し能力だけは元からあり、地球で医者として病院に勤めていた。実の所、癒し能力は秘密にしていて、こっそり瀕死の患者に使うに留めていた。
そんなある日、休日に家でまったりしていると、ペニーママ達がカサンドラの一人住まいの住居に珍しくやって来た。
ペニーは恋人サミュエルと12年前に結婚した。カサンドラが大学に行くため自立して家を出てからの事である。自分に遠慮していたのかとカサンドラは驚いたが、普通の人と新人類の諍いが、その同じころ落ち着いたかららしい。そして遅い結婚だったが、双子の女の子を授かっていた。ジェイドとアゲートと名付けていて、11歳の何故かカサンドラにも似た可愛い子達だ。今日はその子達と三人でやって来た。
「カサンドラ―、ニュースよ」
双子が声を揃えて、大声で報告である。
「なーに、何があったの」
「あたし達、パパのお仕事が変わって、第2の地球に行くの。カサンドラも行こうってパパが言っているよ。あっちで癒し能力を極めた方が良いって、言っていたよ。内緒じゃあなく」
「サミュエルが言っていたか、そうねえ、段々表ざたになりそうな感じだしね」
カサンドラも、同僚や看護師さん達が疑問に思っている事は感じていた。しかし、うまく行く事もあれば、そうでもない時もあり、新人類の力とまではいかない気がしていた。それで、隠していたのだ。だが、それも最近隠しおおせなくなりそうだった。ずらかり時とも言えた。
「そうだね。ついて行こうかな。段々限界を感じていたんだ」
ペネロペは、
「あら、何の限界。癒し能力も板について来たんじゃないの。サミュエルが、良い感じに出来る様だって言っていたよ」
「そのいい感じだけど、サミュエルとあたしの見解には違いがあってね」
「そうなの」
「上手く行きすぎて、皆に感づかれそうになっているの」
「あら、院長は知っているみたいよ」
「げっ、それ本当」
「そうよ、彼とサミュエルは顔見知りだって。何かの時、院長はサミュエルの治療をしてくれたそうよ。で、カサンドラの事も時々話しているらしいよ」
「ううう、それもっと早く知りたかった。分かっているって、知って居たら対応違ったな。誤魔化していたのが何だか恥ずかしい」
「まだ自信が無かったのね。そう言う事なら第2の地球には、もっと本格的な癒し能力のお医者様が居るから、そこで働き出せばきっと上達するよ」
「そうだね。そっちで働こうかな」
「わあい、出発は来週だって。カサンドラもお引越しの準備していてね」
「そんなに急なの。どういう事」
「なんだか、向こうは神経症の人が多くて、人手が足りなくなって要るそうよ。連合軍に新人類の人は入って欲しいそうなの。サミュエルも入隊するんだって。何だか心配になるわ。それに、癒し能力者も募集すると言う話よ。そういう人はそうそう居ない筈だから、カサンドラに来て欲しいって事じゃないの」
「微妙な名指し感ってとこね」
そう言う事で、カサンドラはサミュエルやペネロペ達に付いて行く事となった。
第2の地球に行くと、カサンドラの運命は大きく変わる事となる。