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第14話 家族が一堂に揃って

 

 カサンドラ達はむなしく元の出発点、ムニン22さん達の故郷第16銀河の星のひとつに、戻ってしまう事となった。

 その時、カイの様子が、険しい感じになった。

「どうしたの、カイ。あっちは何か変化があったの」

「どうやら、あの時点は第3銀河の軍隊が囲んでいるぞ」

 カサンドラの問いに答えたカイは、かなり不機嫌な様子である。こういう所、前とは変わったと思うカサンドラだったが、子分は、

 [皆さま~御心配には及びません~わたくしめが直ぐ眠らせましょう]

 カサンドラは子分は前と違って、親分が使えない奴なので、自主的に動き出したと分かった。かなり頼もしく感じてしまう。今のは、イヴにも察せられたらしく、小声で、

「カサンドラ、道ならぬ恋なんかよしてよ。無理だから」

 と言われてしまった。気のせいかもしれないが、子分のデカい顔の色が、幾分か赤くなっていないだろうか。

「何言い出すのよ、イヴ。変な事言って、子分の集中力を試さないでね」

 [精一杯~頑張らせていただきます~~カサンドラ様命ですから~~]

「こりゃ、相思相愛と違うか?」

「黙れ、イヴ」

 双市朗に言われて、口をつぐむイヴ。双市朗としては、子分にこのピンチを何とかしてもらわないと、たまらない所だ。

 到着すると、第3銀河の軍隊に囲まれた、元統率のお出迎えである。

「おや、わしのバカ息子共は居ないのか」

 子分のお休みタイム的声で、第3軍隊を眠らせている間に、カサンドラは、まるでバックミュージックを掛けてもらいながらのセリフ的に言った。

「バカだなんて、とんでもございません。彼らにどんなに助けられたことか。お蔭さまで、すべてうまく行きました。息子さん達は敵の作ったタイムマシンに乗っていて、ある時点で私たちは落ち合う事になっています。お父様もご一緒しましょう」

 カサンドラは、この様子では、ここにはルークもどきもいない事だし、この軍隊は、タイムマシンを使い過去を変えたのではと言う法律違反の疑いで、ムニン22’さん達を逮捕しに来ただけらしいと思った。それでにっこり、元統率を誘ったのだ。

「このご様子では、元統率様も逮捕されそうですね。奥様もご一緒に、タイムマシンで息子さん達の所へ行きましょう」

「そうなのですか、良く分からないが。あなたの役に立ったとは、親として嬉しい限りです。妻と逃げ延びられるのなら、願ったり叶ったりです」

 そう言って、急いで奥さんを連れて来て、タイムマシンに乗り込んだ。

「双市朗、怪我の功名と違う?」

 カサンドラは、にっこり褒めておいた。イヴに、

「あんた、誰でも誘惑するの、止めたら」

 と言われて、カサンドラは、

「イヴ、本当は双市朗と良い感じになりたいんじゃない。家族は家族でも、カップル的に」

 と言ってやった。照れたようだったので、前の世界とは状況が違うんだなと、しみじみ思うカサンドラである。


 もう一度、子分がタイムマシンをセットし直し、ムニン22’’さん達と落ち合う時点へ出発である。

 その時点は、第2の地球に居たカサンドラ達が双市朗を探しに出発した時間より、少し後で、第3銀河の軍艦で基地を出発するよりも、少し前の第3銀河基地、ミアさん宅である。ここにもどれば確実にルークが居る時点のはずと思えた。

 到着すると、既にあのタイムマシンはミアさん宅の庭にあり、カサンドラ達も、その横に着いた。

 カイは、

「この時点にはルークはここに居たはず」

 と言いながら、一番にタイムマシンから降りて、ルークを呼んだ。

 カサンドラは又理屈が分からなくなって、呟いた。

「どうして、ここにしたの。何だか良く分からないんですけど」

 子分は解説した。

 [タイムマシンで~過去を変えるのは~重罪ですから~事が始まる前に~戻り~そのまま~知らないふりをして~誤魔化します~~タイムマシンに~乗っていた私たちが~過去の私達と入れ替わります~~それで万事~お終いです~~]

「なるほど、頭良いね。誰が考えたの。その技」

 [タイムマシンを~使う場合の~基本です~]

「あらら、そういう事言うなんて、誰か今までも使った事ある訳?」

 [噂ですぅ~~]

「だよね~」

 イヴに、

「ほんと、何言っているか知らないけど、あんた達って良いコンビね」

「あら、イヴは分かっているのかと思っていた。そう言えば子分の言葉が分かるのは以前も崋山のあたしと、環と、龍昂爺さんだったかな」

「基本そうよ、そしてテレパシー能力のあるカイ達一家は察していたけど」

「じゃあ、あんたが色々言うのはただ何となく察している訳で、具体的な事は分かってない?」

「そうだよ」

 カサンドラは感心した。

「それもある種の才能だね。あたしには無い能力だ」

「あんた、あたしに才能が有るって言っているとか?前は体力バカと思っていたみたいだけど。なんだか嬉しいな」

「そんなこと思っていなかったと思うけど。今からは親友って事にしておこうか」

「うん、うん。それが良いな」

 カサンドラとイヴは納得し合って、タイムマシンから出てみた。

 カイは、ルークを見つけていて随分感激していたが、これは珍しい状態の様で、抱きつかれたルークは呆れていた。きっと状況は変わっているから、何が何だか分からないらしい。

「さっき爺さん達がタイムマシンで現れたから、驚いたけど。カイも今までどこかをうろついていたんだね。さっきから、お前が居ないから探していたんだけど、まさかお前まで、タイムマシンに乗っていたとは驚きだな。おや、随分大勢さんでやって来たみたいだな。前の世界の環からのテレパシーで、不思議な事情が分かったが、現実とは思えない話だな。それにしても、この二つのタイムマシンどうする。隠してしまわなければ、不味いぞ」

 ルークに言われて、カイも、

「そうそう、それな」

 と困っていると、子分が、

 [わたくしめが~ここに無い事にして~それでも~ここに置いておく事に~しておきましょう~~]

 カサンドラは、『子分、只者では無かったんだな』と改めて思っていた。段々本領を発揮して来ている。さっきも思っていたが。能力的に言って、親分子分の立ち位置は無理がある。

「子分、親分の能力を超えているんだから、この際、子分の関係は前の世界の事だったから解消して、自立したら?」

 子分にそう提案すると、

 [そんな~~精一杯~お仕えしておりましたのに~何が御不満なのでしょう~生涯共に過ごして~頂けるものと~信じておりましたのに~~]

 子分はしくしく泣きだしてしまい、カサンドラは慌てて、

「そうそう、この前そう言ったね。別に不満とかじゃなくて、第3銀河では親分子分の関係は、親分の方が出来る奴の場合が多いと思って。そういう関係は、あたしらとしては違っているのではないかなと、ちょっと思ったけど。別にこのままでもあたしは良いんだけど。ひょっとして子分の能力は、何だか、もっと違う場所で活躍できるランクみたいな気がしたから、言ってみただけなの」

 [わたくしめは~カサンドラ様にお仕えして~生涯過ごしたく~存じます~~お側に~控えさせていただきたく~~・・・]

 しくしく泣くので、

「わかったよ、もう」

 と言ったものの。龍昂爺さんから、

『俺の子分は、タイムマシンに乗る前に、故郷に返したぞ』

 とコンタクトがあった。そう言われたので、

「あれ、爺さんの子分、第20銀河に返したそうだよ。もう弟達はいないってよ。どうする?子分」

 と聞いてみた。

 [ふん~薄っぺらな忠誠心の~弟の話は~わたくしめには~関係ございません~~]

「でも、龍昂爺さんは帰った方が良いって思っている感じだよ」

 カサンドラは、一応言ってみた。

 [わたくしめは~~]

 子分がなおも言い募ろうとすると、

『おい、お前、親分に懸想していないか』

 と、爺さんの恐怖コンタクトみたいのが、子分に行ったようだ。

 子分はビクンと痙攣したようになり、しおれて俯いた。

 [そのようなこと~~恐れ多く~~滅相も無く~~]

 小声で言っていたが、またしくしくが酷くなり、

 [道を~違えて~しまったのでしょうか~~]

 と、とぼとぼとどこかへ行こうとし出した。

「どこ行くの。皆のとこ行こうよ。環だって、待っているみたいよ」

 カサンドラが慌てて呼び止めると、

 [お暇の~時期の様です~~故郷の~声が聞こえてきました~~]

「ええっ、さっき言った事は思い付きで、本気じゃあなかったのに」

 カサンドラは止めようとしたが、龍昂爺さんから、

『故郷から帰って来いと言われているのは、事実の様だぞ』

 と、また言われて、そうなのかと思った。

 そこへ、やはり本物の環が急いでやって来て、

「子分、故郷に帰るんだってね。世話になったな。ありがとう、子分のお陰で随分助かったんだ。もう会えないね、多分。さようなら、元気でね」

 と抱きついているので、カサンドラも子分はどうやら、本当に故郷に戻る気のようだと分かった。

「呼んでいるんだね、故郷の人達が。じゃあ、さようならだね、ありがとう。子分には本当に感謝しているの。離れ離れになっても、あなたの親分のつもりでいるからね。元気でね」

 子分はステーションの方に向っているので、カサンドラは見送りについて行こうとすると。

『子分の出発に、親分は見送りなんかしないぞ』

 龍昂爺さんがまた、言って来た。

 内心、と言っても内緒事は出来ないのだか、『五月蠅い爺さんだな』とチラッと思い浮かべるカサンドラに、『世間の道理ってものを言っているんだ』と言う爺さんである。

 はいはい、とばかりカサンドラは、

「爺さんが見送るなって」

 と言い立ち止まると、環が、

「環が送ってやるから、大丈夫。カサンドラには爺さんが、気を引く真似するなってさ」

 と言ってにっこりした。

「ふうん」

 カサンドラは、『環って随分大人びた感じだな』と思った。そこではっとする。タイムマシンの所為で、実際、年齢が縮まっていないだろうか。

 二人をステーションに行かせた後、戻りながら、両手を出して年齢を勘定しようとするカサンドラだが、それを目撃されたイヴに、

「年齢の勘定は止めといた方が良いよ、タイムマシンの中でも幾分か時間が過ぎるらしいから、あたしらの手じゃあ数えにくいからね」

 と言った。いつも的確な指摘をしてくるイヴである。ミア婆ちゃんの家には、久しぶりに家族達が集まっていた。皆が戻って来たので集まったのだろうが、カサンドラにとっても変化後初めて会う家族も揃っていた。龍昂爺さんは、ゲルダ婆さんとミアさんの間に収まり、

「カサンドラ、何とか無事に戻って来たね。わしとしてはこれでほっと一息だが、お前もそう思っていてくれれば良いんだがな」

 ミアさんが、前に言っていた事の話だろうと思えた。

「正直言って、前の事ははっきり覚えていない事もあるし。私はいつも成り行き任せで生きているから、別に何とも思っていないけど」

 それが正直な答えである。見回せば、実の親、レインとアンに、フロリモンも居る。そして今回の世界では共に育つ事の無かった、従姉妹のシオンやマナミ、そしてその両親である伯父さん伯母さん。そして、シャーロットさんやリリーと思しき人と、知らない彼女らのパートナーらしい人。そうか、ズーム社が普通の会社なので、アンの双子の姉妹は普通の人であり、リリーは普通の人に育ったのだ。

 と言う事は。カサンドラは思い至った。

 環はきっと、リリーの前の世界で生んだ子として、受け入れられたのでは。環の願いは叶ったのだ。

 見た感じ、成り行きでも、これで良いんじゃないかと思えるカサンドラだった。

『龍昂爺さん、良かったね。家族に囲まれる人生になってさ』


 一方ではムニン22’’さん一家が、ニコニコ寛いでいる。前の世界ではムニン22’’さんも自分も連合軍では大変だったな。

 その様子をほっとして見た後、カサンドラはシオンやマナミを見て、思い出した。

「こういう時は、S&Mの出し物で盛り上げたら?」

 と言うと、マナミから、

「Kの空気読めないのが入らないと盛り上がらないよ」

「カサンドラはね、空気読めるの。崋山は読めないけど」

 シオンは、

「うっそう、さっきの子分との別れ。あの鈍さはカサンドラの真骨頂じゃないの」

「えっ、見ていたの」

「ここから庭は丸見えよ。子分が哀れでねえ。ほんと、故郷に帰らなきゃ身が持たないよ、実際」

 マナミにも言われ、何の事やら、首を傾げるカサンドラである。

 何はともあれ、この世界でカサンドラの一家は、一応この時点では、平和になったと言う事だろう。

 完


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