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第11話 遂にタイムマシンが出来上がる

 

 その後のカサンドラ一行。

 ムニン22一族の中でも超が付く利口者の、ムニン22’さんを中心にして、タイムマシンの製作、そして、その燃料の確保はムニン22’’さんのお父さんである元統率者の指図で、手に入れることになった。

 第16銀河では怪しげな企みは得意としていて、皆、お互いに見て見ぬ振りをすると言う風潮だそうだ。以前はそうは思っていなかったのだが、第3銀河総司令官のカイさえ、良い風習だと思い直している。

 マシンの操作の学習は、こちら側のかなりな利口者でもあるカイを中心にして、ムニン22’’さんと研究を重ねていた。タイムマシンの製作担当の従兄さんには、ムニン22’’さんとしては思う所があるようで、彼に相談するときは、カイが担当していた。

 側で見ているカサンドラとしては、マシン操作の内容は理解できないのだが、以外にも、ムニン22’’さんは執念深い性格らしいのが理解できた。それは、崋山の時の記憶を辿ると、あの頃の印象とは矛盾していると思った。彼は何に着け、崋山の言動、今となってはカサンドラの反省しきりの、彼に対する棒弱無人な言動を、全く気にしてはいない様だった。身内には厳しいと言う事だろうか。しかし、記憶の中にも、他の第16銀河星人の、執念深さを感じることがあっが、それは敵に対してだった。ムニン22’’さんは特異な性格なのだろうか。

 カイとムニン22’’さんの頑張りを、横で無頓着に肘をついて、つらつらと眺めながら、カサンドラはそんな取り留めのない事を、気がかりな案件として考えていた。イヴは、横で昼寝を決め込んで、よだれを垂らしそうな寝顔である。カサンドラとしては、そんな不謹慎な態度は出来ない。双市朗だって、難しい顔をして、資料を見ている。

 とは言え、イヴによると彼も相当利口だそうで、だって、と言う表現は失礼らしい。変化の前の彼ではないのだ。カサンドラは段々欠伸が出て来そうになったが、横のイヴの所為だと思う事にして、自分も何か出来そうなことは無いかと、見回した。シャキッと背筋を伸ばし、ふと思いついて、例の案件を口にしようとすると、カイに、

「眠けりゃ寝たらどうだ、カサンドラ。気になって、はかどらないんだよ」

 と失礼な事を言いだした。

「何が気になるって」

 聞いてみると、

「要らん事を言い出しそうでさ。学習速度が落ちるんだよ。応対しなけりゃならなくなるだろう」

 むっとするカサンドラだが、限界も感じていたので、そのまま突っ伏すことにした。即、爆睡となる。

 ムニン22’’さんはそれを見て、

「君もいとこ同士の気安さでだろうけど、随分な物言いだねえ。私はとてもじゃないが、そう言う事は言えない。内心、嫌われたくないと言う思いがあるのかもしれないが」

「嫌ったりなんかしないよ。カサンドラは、たいがいの事は許せるみたいだな。そのくせ、自分には厳しくて、よく見当違いな事を反省する。そんな風だから、側に居ると癒されるんだ。癒し能力もあるけど、多分能力がなくても、性格だけで癒される。それに見てくれ迄良いからな。最強だな」

 双市朗は、

「そうだな、前の事を何も覚えていない若い頃さえ、そんな感じで、俺は追いかけられても、妙に不味い予感がして、逃げ回っていたな。俺なんかに言い寄って来るのは、変だと思ったが、今にして考えると、前の記憶が無意識に有ったんだと思うな」

 それを聞いて、ムニン22’’さんは、

「私も一度、言い寄られて見たかったねえ」

 と言い出した。

 すると間が悪いのか、良いのか判断が付きかねるが、カサンドラはムニン22’’さんが何か聞き捨てならない事を言っていると、感が働いたらしく、急にむくっと起き上がり、

「何か言った?」

 とムニン22’’さんに聞いて来た。

「いや、いや、べつに」

 慌てて否定すると、

「いや、きっと聞き捨てならないこと言った筈。変な感染症になんか、なりたくないし」

 と言って、また眠り出した。ギョッとするムニン22’’さんには、カイは、

「偶然だよ、偶然。気にすることは無いって」

 と慰めておいた。双市朗は呆れて、

「偶然のはずは無いだろう。聞こえたんじゃないか」

 と確かめると、

「だから偶然としか言えないよ。本当に聞いていなかったんだから。そんなはずないと君ら、思っているな。じゃあ言おう。おそらく、推理だな」

 それではもっと心苦しい、ムニン22’’さんである。


 そんな日々を過ごすうちに、超のつく利口者のムニン22’さんはついに、タイムマインが完成したと、カサンドラ達に報告に来た。

「カサンドラ、そして皆さん。お待たせしましたが、ついに例の物は完成した感じです。どうです、これから現物の在りか迄、来られませんか。出来上がったからには、皆さんの管理下に置いた方が、私としては安心です。生憎、燃料の調達は、伯父さんによると、とある同銀河人が、隠し持っていると言う情報は握っているのですが、中々交渉経路の確保は出来にくいそうです。もしかしたら、変化前の実行犯一味ではないでしょうか。彼らに会うことが出来れば、金さえ握らせれば、手に入れることは出来るはずです。軍資金は、いくらでも手に入れたいはずですからね。タイムマシンで時間旅行をするつもりだと言えば、信用するはずです。私たち一族の、研究好きな性格は有名ですからね。」

 カサンドラは、へえ、と思いながら、誰かは分からないけど、確かにその中に、タイムマシンで過去に行き世界を変化させた敵に手を貸したか、その一味が居そうだと思った。カサンドラとしては、今となっては犯人には興味は無かった。そもそも、龍昂爺さんから話を聞くまでは、全く記憶が無かったので、変化前の自分や世界に現実味は無い。

 しかし、カイや双市朗はそうでも無い様子があり、

「じゃあ、俺等が交渉しに行こうかな」

 等と言い出した。なので、カサンドラは、

「あんたら、あたし達は暇じゃあないんだからね。要らん事せずに、もどきの始末に行く事だけに集中しようよ。カイは世間じゃ、もどきになっていると言う事になって居なかった」

 と言って止める事にした。

「そうだよ、だから交渉できるんじゃあないか」

「でも、本当はもどきじゃなくて本人だって、そいつらは知っているかもしれない。どうするの」

「別に俺らは、そいつらをどうこうしようとは思っていないから、安心して良いよ、カサンドラ。俺等も優先順位は分かっている。実際の交渉は、元統率に任せた方がうまく行くさ。只、そこまでたどり着くのには、下っ端にはもどきと思われる奴が相手だと思わせたら、大丈夫じゃあないかな。仲立ち者にたどり着けないって事なんだろ。お偉いさんだから」

「あ、そうだね。カイの言っている意味やっと分かった」

 じゃあ、皆にお任せと思って、カサンドラは様子を見る事にした。

 カイが能力で、大罪人と言うべき一味の下っ端、第16銀河担当の仲介者を見つけると、タイムマシンの燃料を手に入れたいと交渉した。そしてその後、元統率者のムニン22’’さんのお父さんが、金に糸目を付けず、燃料を手に入れてくれた。しかし、犯罪者を見て見ぬ振りをした事が、かえって怪しまれたのか、カイの存在をもどきに気付かれたのか、第3銀河人軍隊が、もどき達犯罪者を捜索しに来ると言う情報が入った。

 カサンドラ達は、ムニン22’さん製作のタイムマシンで慌てて逃げる事になった。目指す場所は、環が消えた場所と時間だ。カイが認識していた。環が戻ってくれば、カサンドラ達の行動に移すべき位置が分かるのだ。戻って来た環達が何処へ行ってきたのか、言い渋った所で、カイのテレパシー能力で分かる。別のタイムマシンでその過去へ行くことになる。だから、環が乗ってもどったのをまた使うと、過去にはタイムマシンが別にもう一台あるので、同じものが二つになったらどうなるのかと言う、カサンドラの懸念は無くなったから、大丈夫である。

 懸念は無いので、いよいよ実行に移せる。カサンドラ達は意気込んだ。

 始めの計画では、タイムマシンに乗るのは、もどきを消す実行犯だけの予定だったが、ルークに乗り移ったもどきがやって来るので、手助けしたムニン22’さん、22’’さんも連れて行かなければ捕まるかもしれない。元統率者のお父さんは、地位が高いから、恍けておくから大丈夫と言われ、タイムマシンの定員の事もあるので、残ってもらう事となった。カサンドラとしては少し心配である。

 それでも出発の時には、何度もお礼を言い、にっこり笑うカサンドラに、ムニン22’’のお父さんはすっかり満足そうに、

「カサンドラさんに喜んでもらって、私はもう思い残すことは在りませんよ。お役に立てて、こんな嬉しい事は、生涯初めてでした」

 と言って見送ってくれた。なんだか、光栄だけれど不吉な物言いだ。

 子分に、

「あのお父さん、大丈夫かな」

 と言うと、

 [カサンドラ様の~御心配には~及びません~~カサンドラ様は~前だけを向いて~いただければよいのです~~]

 これも微妙な言い様、

 当の息子のムニン22’’さんも、

「親父はカサンドラの気を引きたくて、ああいう風に言っているんだ。気にしなくて良いよ」

 等と、少し引っかかる事を言い出すし、だけれど、カサンドラは事が始まる前で、少し神経質になっているかもしれないと思う事にした。

 タイムマシンにいよいよ乗ってしまうと、見かけは小型の光の球体だが、中は、7人乗っても十分な広さで、少し不思議である。

 操縦は、カイ達や子分がするつもりだったが、ムニン22’さんが乗ってきたので、お任せして、皆でじっと見学である。実地見学が出来て良かったとも言える。


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