第10話 旧友達
カサンドラ達は第20銀河の女王様達のおもてなしを、有難く受け、すっかりお腹は満たされたが、やはりもっと満たされる話を期待して、食事を終えていた。それに普通の会話でも音楽的なのに、彼等のおもてなしの音楽は、心地よく気分を和らげてくれていた。
しかし、それらが本当に有難く身に染みるのは、ルークを取り戻すことが叶った場合の事であると認識している。女王様を始め、クーククさんもそれを承知しているようで、クーククさんが、カサンドラやイヴを以前から見知っているからだろう、側に寄って来ると、
[あなた方に~~情報をお教えしましょう~~女王は~~引き止めたがっていますが~~私はじらしたくは~ありません~~この話を聞くことが~一番の~あなた方の~~望みなのですから~~あの事は~敵情報ではありますが~第16銀河は~~時代の統率者が変わる度に~~連合軍の~敵になったり~味方になったりしていましたでしょう~~その度に~~それぞれの情報を~消していると~表向きには~そうなっていますが~実はすべての情報を~手に入れている~一族がいます~~以前の崋山様が~懇意にしておられた~ムニン22一族です~~あの一族にも~変化はありましたが~頼れば~誰かが~崋山様達を覚えているはずと~あの事を教えるはずと~女王は思っていますよ~~だから~第16銀河に行ってみる事を~お勧めします~~]
「本当なの。ありがとうクーククさん。本当にありがとうございます」
カサンドラとイヴは嬉しくなって涙ぐみ、カイは、
「ありがとうございます」
と握手をし、感謝した。きっと彼らが教えてくれる。
カサンドラは、これで、カイがあれこれ調べて目立つ様なことにもならず、きっと彼らはこっそり教えてくれると思うと、本当に有難かった。
そしてイヴが、もう一声、
「それで、何時頃、何処へ行けば良いのか、分かりますか」
これが肝心である。
[それは~最近女王は年齢が行って来て~はっきり分からないようです~~私としては~私の知識では~~昔~どういう訳か~~あいつは第3銀河に~来ていました~変化の前にです~そして消えました~ズーに最近変わる~~変化の頃です~同じ時間に~同じ生き物は~存在できないのです~それが理です~~前の生き物の存在は~タイムマシンで来た生き物に変わります~たとえ過去に行き~その生き物を殺しても~~未来から来た~同じそれが~そこに居る事になると~前の時代のそれが~存在しなくても~存在していても~同じです~タイムマシンで~もどって来たのですから~時空の間に居たのですから~~存在を消せる方法は~あいつがズーに変わるために~戻った同じ時間に行き~彼がズーに変わる前に彼を殺します~~未来からのあいつは~それで死にます~環様のロックダウンが~切れる前です~~]
「その話難しそう、だって、その時間にあたしらがタイムマシンで言ったら、タイムマシンが二つになるんじゃない。本当はひとつなのに、有りえるの」
[おそらく~そこで~ひとつになるでしょう~理屈では新しい方に~変わるかと思いますが~~どうでしょうか~~]
「しかし、やってみるしかないだろう。目的はそれで果たせるはず。違うか」
カイは納得しているようなので、それで良いのかなと思うカサンドラである。
と言う事で、これから第16銀河に行き。ムニン22一家に頼み込むしかない。崋山とのいきさつを知る誰かが存在していて、崋山達との付き合いを、覚えていてくれているだろうか。
カサンドラは、クーククさんが話している間に、また以前の事を詳しく思い出していた。皆には言えない話だが、いらん事、ムニン22’’さんに度々喧嘩を吹っ掛けていた気がする。環にさえ注意されていた事だが、今更ながら、身に染みて後悔していた。本人がいて、覚えていたら、こんな重罪の片棒を担ぐような事、してくれるだろうか。疑問である。しおれていると、イヴが感付き、
「どうしたの」
と聞いて来た。すると、今まで黙っていた双市朗が、
「そのカサンドラの顔は、あの時失態を噂されていた、崋山の表情に似ている。前にも見たことがあるな。この人、俺等とは失態の定義が違うんだ。イヴ、気にすることは無いぞ。おそらく大したことじゃない」
「へぇ」
カイも少し、くしゃりと笑い、
「失態の定義が違うとはよく言ったな。双市朗。全く笑っちまうよ」
カサンドラは、なんだかみんな大丈夫そうにしていて、ほっとする。何だかうまく行きそうな気がして来た。
皆、少し仮眠をとると、第20銀河の人達に別れのあいさつをした後、急いで第16銀河に旅立った。
何故か、子分だけではなく、以前世話になった事もある、第20銀河人のククンさんがついて行くと言ってくれた。第20銀河人としてもお願いしたい旨を伝えたいそうだ。子分では、少し圧が足りないかもしれないとも言う。どういう展開になるのだろう。
子分は、いざとなれば、ククン様がお願いの圧を掛けると言っている。が、念のためであり、きっと協力してくれるはずと言う。
ククンさんは皆に笑いかけ、
[きっと~上手く行きますよ~~」
と言う、そして、皆が何だかなごみだす。きっと悲壮感があふれていて、良くなかったのだろう。
カサンドラは第20銀河の良い人達と、知り合えていたんだなと思い返していた。
第16銀河の本拠地の星にたどり着いた。ククンさんが案内してくれなければ、カサンドラには分からなかった。子分は通常、親分の指示で動く者である。ククンさんの登場は必要だった。
今迄、第16銀河と第20銀河は長い付き合いが有ったようで、すっかりククンさんの才覚にお任せ状態である。第16銀河の現在の統率者に、ククンさんが話を付けてくれ、皆、ほっとした。
そして現在、皆大人しく、豪華な待合室的な部屋で、飲み物などでもてなされていた。第16銀河人もほぼどんな環境でも、生きていける人種であり、ここでも、何故か第3銀河の環境の部屋があった。どういう訳だろうか。カサンドラが、ぼんやり考えていると、イヴが、
「そう言えば、あんた、崋山の時しばらくこっちに居たんじゃあなかった」
と言い出した。カサンドラは、喧嘩の事は憶えていたが、そう言うのは、さっぱり考えが及んでいなかった事が分かった。元気になって来た双市朗に、
「悩まなくても、カサンドラには味方が多いんじゃあないか。この環境があるって事は、きっとお前の喧嘩相手も、事情は覚えていて、懐かしんでくれていた可能性が高いな」
そう言われると、気分が上向いて来るカサンドラである。
その時、皆で待っている部屋へ、第16銀河人が数人飛び込んで来た、と言う感じで入って来た。
「崋山っ」
と名を呼ばれ、はっと見ると、その人は、
「カサンドラなんだね、そうか、ズーム社が敵の会社ではなくなったからだね」
としみじみしている様子である。その横の人は、
「何と素晴らしいお方。異星人ながらほれぼれするね。ほぉにゃらぁら(ここはきっと名前と思われる)、ここはひと肌脱いで、頑張るしかないな。お前もそれくらいの義理はあるだろう」
別の人が、
「義理はあっても、能力には限りがありますからね、伯父さん。いくら親ばかでも、息子の能力は把握しておくべきです。ここは私が頑張る所でしょう。例の物は作ることは出来ると思います。只、動かす燃料は有りません。御法度の材料が多く、手に入りません。だから操縦の仕方までを教えておく事しか、協力は出来ませんね。それにしても、彼等は燃料をどうやって手に入れたのか不思議ですな」
すると、彼に能力云々を言われて、気を悪くしていたらしいその人が、
「それぐらい考え付かないのか、察しの悪い奴。最初に、御法度になる前の時代にタイムマシンで行って、燃料を持って帰っているんだろう。それを手に入れて置かないと、行き来は不安だな。敵のアジトのどこかに、きっちり保管してあると思うな。余分に乗せておかないと、不測の事態が起こった時、何度かうろついた後、元の時空点にもどれなくなっては、タイムトラベルをする意味がないだろう。誰も知らない所に居て何が楽しい。結果を喜び合うのが目的と違うか」
このうんちくをたれているのは、崋山だった頃の友達、ムニン22’’さんで間違いないのではないだろうか。そしてもう一方は彼の従兄ムニン22’さん、そして親ばかと言われた人はムニン22’’さんの父親と分かったカサンドラである。話の内容から、燃料の確保が必用らしい。敵方から奪うとなると、以前の龍昂爺さんの生き様を、彷彿とさせる事になりそうな気がする。
『同感だな』
カイがコンタクトで同意してきた。そして、
「で、私たちは何から始めればいいでしょうか」
と聞いている。
「カイだね、少し感じが違う気がするけれど」
ムニン22’’さんがカイに確かめている。
「ええ、色々あって」
カサンドラは、何処まで事情を把握しているのかなと思い、
「ムニン22’’さんで良いんですよね。ずっと忘れていたけれど、最近色々あって思い出したの。ルークの事覚えている?彼がアメーバもどきに殺されて、今、そいつが彼になっているんだけれど。今の奴は強くて子分の声も見切られているの。今の彼には敵わないから、タイムマシンで過去に戻って殺そうと計画しているの」
「それは大変じゃないか。事情としては元崋山のカサンドラがタイムマシンが必用らしいと聞いたんだが、そんな深刻な理由なら、俺等も本気を出さないと。全面的に協力するからね。燃料の在りかを探ってそいつを奪うには、軍隊が居るレベルになりそうだな。第3銀河は、そういう理由なら、もしや、君らとは敵っぽくなっていないかな」
カサンドラも同感で、
「きっと、もどきのルークには、カイがもどきになってしまったって、言いふらされていると思うから、私達は第3銀河には今は戻れない」
彼のお父さんは、
「そうかい、そうかい、カサンドラさん。それは気の毒だね。ここでずっと過ごしていて良いんだよ。カイさんや、そのこのお兄さんや、私らで何とかするから、カサンドラさんはそちらのお嬢さんと一緒に、ここで事が済むまで過ごしていてね。きっと良いように済ませるから」
有難いが、そこまでのんびりしてはいられないと、言っておきたかったが、ここは黙っておけと、カイに止められ、曖昧に笑っておいたカサンドラである。
この曖昧なヘラリ笑い、世間一般では、カサンドラの悩殺笑いと噂されることになる。
これで皆は必死で頑張り出すのである。後でカイが、『カサンドラの事は十分、分かっている筈なのに、さっきの笑い方、クラっとした』とコンタクトしてきた。