第1話 禁断のタイムトラベル
SF小説に有りがちなタイムトラベルを、未来・家族の番外編として投稿しました。
今迄未来・家族をご覧の方にお知らせです。
過去がタイムトラベラーにより変えられて、設定が変わってしまいますので、今までのストーリーを気に入っている方はご注意ください。
崋山は、病院の資料室に籠っていると、うっぷんのはけ口として丁度良いネタを見つけた。
「ムニンの奴めどうしてくれようか。『22』も『’’』も付けてやらないからな。一言行ってやらねば・・・」
意気揚々とも言える気分で第16銀河に居る旧友に連絡を入れた。
崋山は最近、また気分が塞いで来ていた。龍昂爺さんと環を連れ戻しに行く事になり、無事なのを見てやれやれと安心したのもつかの間である。環は家には帰らないと言い出した。
現在は第3銀河本部で次の任務待ちといった所である。仕方なく爺さんと二人で家に帰るしかなかった。皆、がっかりである。
ムニン22''に通じるのを待ちながら、崋山は思いを口に出していた。
「次の任務待ちだとぉ。はっきり言ってやることないんだろうがっ。どうして家に帰ってパパの仕事手伝ってくれない訳?」
「はいはい、それは又ご愁傷様ですな。あはは」
ムニン22''の相槌を耳にして、
「今のは独り言だ。大体お前があいつをけしかけたんだろう。どうして、卒業後は家に帰った方が良いんじゃないかと言ってくれなかったんだ。俺らの気持ちは知っていたくせに。あ、今日はその話じゃ無かった」
「へえ、他に話題があるのか」
「あるも、あるも。おおありだっ。お前がこんないい加減な奴だとは思わなかった。いや、いい加減な奴だと前から思っていたと言う方が良かったかな」
「ハイハイ、で、どういう話かな」
「マジでどうかと思う。論文と言う代物は改版はきちんとやれ、修正するのは仕方ない。色々発見もあるかもしれない。しかし、ツラっと書き変えるんじゃない。こっちはお前んとこの論文見ているんだからな」
「おや、聞き捨てならない話だな。ムニン22一族、親父は政界に行っちまったが、他の一族は学者としてちっとばかりプライドみたいなものは有るんだからな。妙な言いがかりは辞めた方が良いぞ。話によっては、こっちもマジになるぞ」
急に物言いがピリッとしてきた旧友に、内心少し驚く崋山。しかし勢いは止まらず、
「ふん、プライドがあるならそれらしいことしてから言えよな。お前が前に書いていた、第13銀河の環境の論文、最近書き変えたろうがっ。俺の病院に一昨日、第13銀河から瀕死の冷凍人間が来て、彼の所の環境に戻そうとしたけれど状態が悪くて、ちっとばかり第13銀河の大気を重病人用に変えるべきかなと思ってお前の論文を見返したら、大気の構成書き変えただろチロッと、何時変えたか知らないがこっちは前ので溶かしたんだからな。影響が出たら、お前の責任だからな。変えたら俺んとこみたいに病院関係には知らせろよ。重病人はそういうとこ大事だろ。いくら前は敵だったとしても、分け隔てなく治すって言うのが第3銀河のと言うか、日向病院の大方針ってやつを受け継いでいるんだからな」
「そりゃあ、何処の病院だろうとそうさ。そしてそういう変更は学者として、絶対に改版したら論文としての改版の手続きはするし、病院だけでなく銀河の総合本部には行く。そしてお前の言う第13銀河の環境は変更はしていない筈だ。既に銀河の環境は何処のも知れている。特に第13とかはな。お前の記憶違いか。設定ミスか知らないけれど。俺らは関係ないって所だな」
「ふざけるな。そういうとこ、こっちも間違えはしない。本部に訴えてやるぞ。きっとチロット変更はそっちもやったろうな。指摘してやれば不始末が発覚するからな。今から慌てて改版しなけりゃ恥かくぞ。ざまあ見ろ」
そう言って、崋山は通信を切った。
「ふん、俺が訴えるのと奴が改版の手続きするのとどっちが早いかな」
とは言っても慌てて、総合本部のデーターを確かめてみた。そっちはちゃんと変えている可能性もある。あいつはいい加減だが、押さえる所は押さえているはずだ。しかし調べると、チロッと変える方になっていた。崋山は違和感を覚えた。総本部には第13銀河人も存在しているし、自分ら関係の資料をチェックしない筈はない。齟齬があれば修正させるはず。何だか気になり、世話になっていたシャール防衛司令官に、久しぶりに連絡してみようと思った。
そして、衝撃の事実を知る。
「久しぶりです。シャールさん。お忙しくなければお話ししたい事があって」
「依田君、良く連絡してくれたな。君にも連絡したかったが、てんやわんやでな」
「何かあったのですか」
「どうやら、敗北した第13銀河や第9銀河の残党がやっちまったらしい件があって、大混乱になっている。第3銀河も影響が出て来るはずだ」
「どうしたんですか」
「また御法度をやらかした。頭が良すぎてモラルの無いのはどうしようもない」
「何がありましたか」
「彼らはタイムマシンの技術を持っている。使用するのは禁止されているのだが、彼等はほぼ滅ぼされたと言っても良い状況だろう。自分達もどれだけの銀河の文明を滅ぼしていたか知れないくせに、自分らが滅んだのが我慢できなかったらしい。それで敗北の原因を検証して、第22銀河の攻撃、いわゆるアメーバもどきの故郷を滅ぼした事を反省して、自分らのしたことを無かった事にすれば、そして第13銀河のキャプテンズーの出現を阻止すれば滅びずに済むと考えたんだ。で、どうやら実行したらしい。つまり、第22銀河の攻撃をしていないし、キャプテンズーはキャプテンになっては居ない。過去を変えたんだ。今どんどん全銀河は変化し始めた。人の生き死にが変化している。じき、第3銀河にも影響が出る。どうなるかな。はっきり言って知らぬが仏だ。世界は変わる」
「大変な時に何ですが、第13銀河の環境も変わるんですか。病人がこっちに来ていますけど」
「君もおかしなことを聞くねぇ。今更だな。病室に行ってみろ。存在しているかな。そう言えばあの銀河は第11銀河と一昔前に戦争してね、最近まで大気の環境はその影響であまり彼等には適していなかったが、いつの間にか元に戻っている。どうやら、彼等の星が一番変化しているが、じき、地球も元に戻ると言うか、君ら自身にも影響が出るんじゃあないか、ほら、出会いがあったり無かったりで、生まれる人間や生まれない人間が出て来る。君らにはまだ、変化は無いようだね。第3銀河が戦争に加わったのは最近だからね。と言っても、五、六十年は経つかな。他の銀河よりは変化は少ないし、遅れているだろうが。地球が元に戻りそうだね。それは良かったと言えるかもしれないねえ。長い目で見れば。君は生存して居そうかな。こんな事を話しているうちに、私が消えたら悪しからずってとこかな。他の人間にどうこう言う必要は無いよ。わしらは変わったと知ってしまったが、知らない者は、ずっと今まで変わった事を知らずに、それが当たり前として暮らして居るんだからね、依田君と話す事はもう無いだろうね。君が連絡してくれて良かったよ。君と少しの間だが知り合うことが出来て、光栄だった。ありがとう」
「そんな。よく意味が分からないですけど、後で考えます。こちらこそお世話になりました。ありがとうございました」
崋山は電話を切ると、ポカンと一瞬したけれど、ムニン22''さんには謝っておこうと思い、また、彼に連絡してみた。
すると、『この通信網は、存在していません』と通信が返って来た。
変わったんだ、と思いながら、崋山は急に眠気を憶えた。と言う事は・・・