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警備員
「聖川。此処に置いてある資料は持ち出し厳禁だからな。閲覧する時はこの部屋だけにしろ」
「は、はい……」
会社の中でも上層階に位置する特別資料室へと、国枝先輩に案内をされる。資料室の中でも特に重要な資料を保管している部屋だ。部屋の造りも他の部屋と違い、重厚感溢れる雰囲気は西洋の図書館のようである。
「……? ロッカー?」
部屋の雰囲気に圧倒されながら、部屋を眺めていると長方形の灰色の物体が目に入る。それは普段利用し、よく目にするロッカーだ。本棚と本棚の間に一つだけ存在するそれは、六つの南京錠で施錠され周囲を鎖で巻かれている。西洋の雰囲気の中で異質な存在感を放つ。
ロッカーのネームプレートには何故か『警備員』と書かれている。
「お前なら、関わることはないだろうから気にするな」
「? はい」
何を保管しているのか分からないが、ロッカーの中には厳重に保管するべき何かが入れられているのだろう。先輩が言うように、新入社員の僕が関わることはない。相槌を打つと、歩みを再開する。
ロッカーの内側から、引っ搔くような音が響いた。