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この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

りゅう星花の侍女は姫様の幸せのためならなんだって差し出す。

作者: カゼ ルビネ

数行、火事の表現があり苦手な人は、ブラウザバックしてください。

私は姫様を守り通す。そのためならなんだって差し出す。

私の異能で十歳の姫様を三歳の幼女に変えた。

私は異能の反動で十七歳から二十四歳の女になった。姫様の記憶は三歳までになった。

私は、姫様の三歳から十歳までの記憶が入ってきた。

姫の友達との記憶を奪うのは惜しいが、それ以外の辛い記憶を奪えてよかった。

「あなただあれ?」

「静かにあとで答える。目を閉じて耳を塞いで」

さあ、姫様、この屋敷の火事に紛れて逃げましょう。

私は、火がついた本邸から火をもらい、離れに撒いた油に火をつける。

辛い記憶と共に過ごした離れと本邸が燃えていく。

これが領地を管理せず、甘い汁を吸った者たちの末路。

姫を置いて逃げたものは、反乱軍に捕まっていた。

私は足の悪い姫を助けようとした結果で、運良く反乱軍に捕まらずにすんだ。

小さくなった姫を抱き抱え、走る。

獣のような悲鳴と残酷な歓声が聞こえぬほど遠くに走る。







「私は、姫様の味方です。叱ることはあれど、決して、姫様を傷つけません。あなたを守るために私は行きます。」

「ほんと」

あどけない瞳で私を見つめる。

「本当です。姫。ですが、しばらくこの国を離れるまでは、私のことはお父さんと及びください。

姫様が姫であることがバレて仕舞えば、死んでしまいます」

死という言葉に反応したのか。

瞳が潤んでいる。


私は抱きしめた。

大柄で男顔だから、大男女と言われて蔑まれ、売れ残っていたおかげで姫様の侍女になれた。

姫様は怯えず、わたしを大切にしてくれた。

褒めてくれた。

右肩に少しある鱗も綺麗と褒めてくれた。

「大丈夫です。私は姫様が幸せになるまで守りますから」

私は、長く伸ばした髪を持っていた小刀で短く断ち切った。






なんで、火事から半年も過ぎているのに姫の名前と絵が描かれた張り紙がそこらじゅうにある。

国の連中はしつこい。

潮風に混じり、張り紙が舞う。

「このものは、結界師の血を引くもの。国の結界を維持するために必要なものである。足が悪い。必ず無傷で生け取りにしろ。報酬は…」

それが書き記されていた。

国が続けば、三世代くらい遊べる金額が書かれていた。

「お父さん、絵すごい怖い。」

その絵の姫は目が吊り上がったように描かれ、悪鬼のようになっていた。

「この絵を描いた人の感覚よるものだから」

侍女の時は、出さなかった低い地声で答える。

姫に頭巾を深く被らせる。

三歳までの姫は、足が悪くなく普通に歩けた。

しかし、攫われてしまうのではないかと怖く、この国外への港に続く街道を歩く時はいつも抱っこをしていた。

検閲などは、この港に着くまで何度も潜り抜けてきた。

幸い侍女のことなどは誰も探さず。

私は男装、姫は幼女になっていることもあり、難なくすり抜けることができた。

「国外に出るものは皆、魔力の検査を行うように!」

しかし、最後の最後に難関が来た。

こんな検査、火事が起こる前はなかった。

しばらく、この港町に潜伏すべきか。

検査の列を眺め、考えあぐねていた。

「りゅうか」

私の名前を見知らぬ男が呼んだ。







私は一瞬身を固める。

私はすぐに歩き始める。

港の人混みに紛れるように、姫の顔を隠して不自然ではない速足で私の名前を呼んだ誰かから距離を取る。

聞き間違いであってくれ、私と同じ名前の人があの列にいて、誰かが名前を呼んだに違いない。

けれど、誰かの足音がしつこく私たちを追いかけまわす。

時間が経つごとに、誰か以外の足音が増える。

しまいに、路地に追い込まれた。

「お父さん」

姫に不安な気持ちが伝わったのだろう。

私は不安を打ち消したいがために姫を抱きしめる。

「りゅうか」

私の名前を呼ぶ誰かがすぐそこに迫っていた。

「誰だきみは、私たち親子を勝手に追いかけ回して、私も娘もすっかり怯えているよ。」

私は、振り返り睨みつける。

「やっぱり、リュウカだ。」

「お前は、」

誰だという前に視界が暗くなる。

眠気に襲われ倒れそうになるが、前に倒れれば、抱き抱えた姫を押しつぶす。

だから後ろに倒れることにした。

頭を打つ覚悟で倒れたら、男に止められた。

「ソウ、オレワオマエノコブンダッタ。スオウ」

眠気の中、男は私の耳元で囁いたが、姫様を離さまいと抱きしめた私にはよく聞こえなかった。







貴族になる前、私は平民の母と暮らしていた。

女だと、セイジの道具にされて、引き離されるのが嫌だったからと母に男に育てられた。

元々、男勝りで勝気な性格だった私は、喧嘩で地域のガキをまとめ上げ、十二歳で対立集団の親分だった三歳上のスオウをのして成り上がった。

十三歳の時スオウがある貴族の遺児であることがわかりかり、引き取られ、私が女であることを貴族である父とその妻に伝えるまで。

女だとバレた私は、母と慣れ親しんだ故郷から離され、ひとり寂しい貴族の屋敷に閉じ込められた。

寂しさを消すように勉学と武術を頑張った結果、強く賢過ぎて、婿候補が逃げるような少女になっていた。

しかし、父とその妻の間に、男の子供ができ、私は、選ぶ立場から、選ばれる立場に変わって、売れ残り、姫様に出会うことができた。







柔らかな布団から起き上がる。

目が覚めると姫様がいない。


倒れる時、この腕で抱きしめた娘がいないどこだ。

「キャー」

姫様の高い声が、耳に届く。

私は、目につく襖を開けながら、姫を探す。

「ハルギク、どこにおるのじゃ」

私がつけた娘の名を叫びながら探し回る。

ここは敵の屋敷かも知れぬ。

姫が危ない目に遭っているかも知れない。

「リュウカ、ここにいるよー」

あの男の声がした方に走ると開けた庭についた。

そこで、あの男、スオウが娘を高い高いしていた。

姫は満面の笑みを浮かべていた。

「スオウ、貴様、なんのつもりで、ハルギクに触ってる。」

私は、強張りながら問いかける。

スオウは、きみの悪いくらい口角を上げて答えた。

「この子のお父さんになるつもりで。君の大切なコなんでしょ。それに俺にとっても大切なコだからね」

スオウは目の前にいる娘の正体に気づいている。

今、大切な娘はスオウの手の中にある。

「なんでもするから、ハルギクに酷いことはしないで」

「なんでもねえ」

スオウはハルギクを腕から下ろし、腹を抱え震え始めた。

「わかった。ハルギクには酷いことはしない」






私は今白無垢を着せさせられている。

なんでも、ハルギクを私の連れ子にすることで、いろんな手続きをすっ飛ばして、スオウの保護下に入れるそうだ。

そうすることで国外に行くより安全だと言われた。

それを信じて、私は目の前の酒が入った杯に口をつけた。


この結婚式は、のちに結界姫の最強の保護者となる夫婦が誕生したら結婚式である。



読んでくれてありがとうございます。


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