君はいつも暖かい
短編
君はいつだって暖かい。
これがこの人の口癖。
私に優しくふれながら。
いつも決まって安堵の表情を魅せるこの人。
私はいつだってこの人と一緒にいる――し、今も隣でいつもの顔で私を撫でながら隣にいる。私自身、この人に触れられ――抱きしめられても嫌な気持ちなんて、何ひとつとして抱かない。むしろ、それこそ、こんな雪の降り積もる――その中でさえも暖かくて嬉しい気持ちに包まれる。愛してくれているんだと実感できる。感謝しても――してもまったくといっていいほどに、注いでも注いでも。感謝なんてし足りないのだと思う――心の底から。
「それはぼくの方だよ。君に出逢えたから今のぼくがいるんだ」
この人はどこぞの国のコメディアンですかと言えるような、少しだけ両手をあげて眉を下げながら――やれやれ君はいつもそうだ。と続けた。もちろん私に言っているのだろうけれど。隣には私しかいないんだし。わかりきっていることなのだけれど、なんともいやはや笑えない。私だってため息もつきたくもなる。まぁ、この人が言うように――そうなのかもしれないし、じゃないのかもしれい。私からすればなんとも微妙で不透明で曖昧で。そんな気持ちになる。
「それにしたってやっとここまで来れた」
と、真っ白な木々が瞬く間に入れ替わり立ち代り窓の外を描写している景色を眺めながらこの人は呟いていた。まぁたしかにそうなのかもしれないけれど、よくも飽きもせず何時間も見ていられるものだと思う。
私はこの人にもたれかかって目を閉じていた。時折うっすらと目を開けると、この人の目の前にある不透明な硝子は――やはりすぐに曇って見えなくなり、この人は意地にでもなっているのだろうか。少しほつれた毛糸の袖口で――拭いては曇り拭いては曇りを繰り返して――その光景を眺めながら、また私は目を閉じていた。
「もうすぐだよ」
その声で私は先ほどからの半睡半醒の中で、チラッと横目でこの人を見た。
本当に良かったのだろうかと思った。
私はこんな結末なんてこの人に――