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最強の女将軍としがない補佐官

久々の新作長編!

今度は中華ファンタジーです!

どうぞよろしくお願いします!

「全員! 構え!」


 王直属親衛隊である “銀鳳騎(ぎんほうき)”の面々は、この国……“涼”最強と呼ばれる女将軍、“(とう)白蓮(はくれん)”の号令の下、一斉に槍を構える。


「突けえええええ!」

「「「「「せいッッッ!」」」」」


 “銀鳳騎”の兵士達は、一糸乱れぬ動きで前へ槍を突き出した。

 おそらく、高い所から俯瞰(ふかん)して兵士達の姿を眺めたら、さぞや壮観に違いないだろう。


 さて……そんな訓練に没頭している中、補佐官の俺は将軍に声をかけないといけない。

 さすがに、陛下からの伝令が来たというのに、ないがしろにできないのだが……いかんせん、集中している将軍に声をかけると、こちらに雷が飛んでくるのだ……。


「“子孝(しこう)”殿……さすがにこれ以上は待てませぬ……早くしませぬと、陛下がお怒りに……」


 伝令に来た宦官(かんがん)が、冷や汗をかきながら俺に催促してくるが、ならば自分で伝令を伝えればよいだろうに……。

 とはいえ、それができるのであれば苦労はしないのだけどなあ……。


 なにせ、幼馴染(・・・)であるこの俺ですら、あの状態の将軍に声をかけるのは(はばか)られる。


「子孝殿……!」

「わ、分かりましたから、そのような泣きそうな顔をしないでくださいよ……」


 さすがにいたたまれなくなり、今も訓練を続けている将軍の下へ、歩を進める。

 うう……できれば勘弁願いたいのだが……。


 俺はおそるおそる近付き、将軍の持つ獲物、方天画戟(ほうてんがげき)がぎりぎり届かない位置で立ち止まると。


「将軍……将軍……」

「次! 払えええええ!」

「「「「「応!」」」」」


 駄目だ……俺の声が届いていない。まあ、視界にすら入っていないのだけど……。

 もちろん、全力で振るう将軍の方天画戟も俺の鼻先をかすめた程度で届いては……いや、届いたのか?

 ……と、とにかく、仕方ないので覚悟を決めるか。


「将軍! 董将軍!」


 俺はさらに一歩近づき、大声でその名を叫ぶと。


「何だ! 我々は訓練中なのだぞ!」


 やっぱり……将軍は眉根を寄せ、かなりご機嫌斜めだ……。

 だが、そのような顔をされたとしても、将軍のその美しさは変わらない。


 異民族である母君の血を引く将軍の長い髪は白銀に輝き、琥珀(こはく)色の瞳は全ての者を惹きつける。

 もちろん、目鼻立ちもくっきりしており、肌は陽に当たっているにもかかわらず、その白磁のような白さを失わない。

 体躯(たいく)も、高貴な姫や市井の女子(おなご)達と比べれば大きい部類ではあるが、それでも、一般的な俺の身体とさほど変わらない。


 なのに、いざ戦となれば常人離れした膂力(りょりょく)で一丈(三メートル)はあろうかという方天画戟を、まるで小枝でも握っているかのように軽々と振り回して敵を討ち倒すのだから、手に負えない。


 何より……将軍には恩寵(おんちょう)、【飛将軍】がある。

 将軍の体術全てを強化するばかりか、その手に持つ武器で一撃を放てば、たとえどんなもの……鋼鉄でできた重厚な盾であろうとも貫通せしめる、この大陸全土において将軍だけが持ちうる、唯一無二の恩寵。


 おかげでこちらとしては、将軍の背中について行くのに必死なんだけど……。

 いやはや、凄すぎる幼馴染(・・・)を持つと苦労するよ……。


「子孝! だから何だと聞いているだろう!」


 おっと、ついつい(ほう)けてしまった。


「あ、ああいえすいません……そ、それで……陛下から伝令でして……『すぐに登庁するように』とのことです」

「むう……今度は何だというのだ……」


 俺の言葉を聞き、将軍はその細い眉をますます吊り上げた。

 まあ……将軍は陛下と犬猿の仲だからなあ……。


「皆の者、我は少し離れるが、訓練を続けるように!」


 兵士達に将軍はそう伝えると。


「子孝! “漢升(かんしょう)”行くぞ!」

「は、はいい……」


 あー……やはり、お供をさせられるか。

 漢升殿も供をされるのだから、できれば俺は勘弁願いたいんだけどなあ……。


「子孝! 何をぐずぐずしている!」

「……お嬢……いや、将軍のご命令でござる。諦めなされ」

「……………………………」


 漢升殿に軽く肩を叩かれると、俺はうなだれながら後に続いた。

 なお、この漢升殿は将軍のご実家……董家の先々代から仕える近侍(きんじ)なんだが、実は董家の暗部を一手に担う凄腕の暗殺者であったりする。


 そして……俺達“銀鳳騎”の()であり()でもある。


 一応、こんな市井上がりの俺に対しても礼をもって接してくれるのだが、どこか俺をからかう節があるのが玉に(きず)だ。

 といっても、漢升殿がからかう相手は、もう一人(・・・・)いるけど。


 で、俺達三人は王府(政庁)へとやって来ると。


「董将軍、ごきげんよう」


 陛下の一人娘である、“華陽姫かようひめ”様が現れた。

お読みいただき、ありがとうございました!


本日は四話投稿いたしますのでどうぞよろしくお願いします!


少しでも面白い! 続きが読みたい! と思っていただけたら、ブクマ、評価、感想をよろしくお願いします!

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― 新着の感想 ―
[良い点] う~ん。董将軍は、最初は、キングダムでいう所の六将のひとり、キョウ(漢字の出し方が分からなくて)みたいな立ち位置なのでしょうか。もっとも、能力が、六将どころではなさそですが。 [一言] …
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