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旅する鍛冶師と勇者たち。  作者: バドライ
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カズヒコ編③そこにいるのは…

洞窟から出ると、和彦は背中になにか冷たいものを感じて身震いをした。

何かがこちらをみている。そんな気がして周囲を見渡したが何もなかったので、また1人歩き出す。


雨上がりの空には虹が架かっており、その美しい空を見上げていたため、気付くのが遅れた。

背後からガサッ、という音。見通しの悪い森だったとはいえ、ここまで接近させてしまったのは完全に注意不足のせいだ。

半ば反射的に抜刀すると、音の鳴った方を見た。


「…おい、誰だか知らんが、そこにいるんだろ。」


と、声をかけると茂みから人影が出現した。


「おぅ!!バレちまったら仕方ねぇ。俺はここらで盗賊をやってるモンだ。

言っておくが、名前を言うほどバカじゃないぜ。」

「盗賊と言わなかったら、不意打ちできたかもな。」

「あ…」


自分でバカではないと言っていたが、相当バカらしい。

しかし、さきほどの感じていた視線の正体はコイツか。

ならば、金品を奪うために戦闘になるだろう。和彦は刀の柄をより強く握った。

相手も剣を両手で握ると、和彦を見て構えている。


「言っておくがよ、俺はこう見えても剣の腕はいい方なんだよッ…!」


そう言った直後に間合いを詰めてくる盗賊。すかさず刀で防御姿勢をとる。


「ラァッ!!」

「クッ…」


想像以上の衝撃に、およそ2メートルほど吹き飛ばされる。手が痺れ、衝撃が強かったことを再認識させられた。どうやら、盗賊の攻撃は一撃の重さを追及した動きのようだ。確かに剣は大きく、

とてもではないが簡単に防げるものではない。

しかし、正面から防ぐだけが防御というものではない。剛の技に柔の技で反撃するのだ。


「その程度の力か?」

「へっ、吹き飛ばされるような弱っちい奴にんなこと言われたって怒りゃしねぇよ。

ま、お前がそうやって望むのんら別だけどなぁっ!」


再び間合いを詰めてくるが、今度も直線軌道の単純な攻撃なので回避することは簡単だ。

斜め上から振り下ろされた剣の切っ先が当たる直前にステップで回避する。

重要なのはこの後だ。和彦は迷いなく刀を投げ、盗賊の首に向けて手刀を放った。

盗賊は瞬時に意識を失い、当然ながらその場に倒れ込む。


「…いつになっても人を斬る恐怖心は消えないものだな。」


命を奪おうとしてきた相手さえ斬れない自分に対し、吐き捨てるように誰にも聞こえないほどの音量で呟くと、今度こそ{エフィル}を目指して進み始めたのであった。

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