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旅する鍛冶師と勇者たち。  作者: バドライ
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勇者一行、また村へ。

「…ずいぶんと戻るのが早かったな。どうした?」


そう言って出迎えてくれたのは鍛冶屋のジオだった。

強志が装着した指輪から出た光は{ティオール村}の方を示していた。

それをみたヘクセが突然「そういえば杖忘れてきたな…」と言ったので急遽ジオ宅に戻ることに。

事情を説明すると「少し待ってろよ。」と言われ、家の前でしばらく雑談をしながら待った。

しばらくするとジオが杖を抱えて出てきた。


「ほらよ、忘れものだ。」

「あ、ありがとう。」


受け取ったヘクセがぎこちなくそういうと


「いいっていいって。その代わりといっちゃあなんだが…コイツも旅に同行させてくれないか?」


ジオの後ろに小さな影があることに気付いた強志が後ろを覗き込むと、そこにはジアの姿があり、

思わず大きな声を出して驚いてしまった。


「ジ、ジア!?え…でもなぜですか?」

「いや…昨日は急だったから言えなかったけどよ、コイツはまだ世界を知らないし、

俺みたいに広範囲を動くのが難しくなるような歳になるまえに見せてやりたいな、と。

それに、コイツの母親にも会わせてやりたいんだよ。

色々とワケあって、幼いころに他の場所へ行っちまったからな。」

「ジオさん、俺達はこの先、とてつもない強敵と戦うこともあるかもしれません。正直、ジアの命を保証できる自信はないです。それでもジアを旅に出させますか?」


ジェイマーがいつになく真剣な声色でジオにそう訊いた。

すると、返事はジオ――ではなく、後ろでジオの腰を握っていたジアの口から発せられた。


「ジア、魔法使えるように練習したもん。頑張ったんだよ。村の外の世界を見たり、村を守るために。それに、魔法だけじゃなくて、短剣も練習してたの。」


腰から二本の短剣を抜き、強志達に見せた。


「まぁ、コイツがここまでやるのは珍しいんだ。飽き性だし、できないと思ったらすぐに諦めちまう。でも、これだけは諦めずにやったんだ。それだけ、コイツの気持ちが本物だってことだ。

だからどうか、連れてってやれないか?」


少し間をあけてからジェイマーは頷いた。


「わかりました。俺達が責任を持って連れて行きます。」

「が、頑張る!」

「本当か!?す、少し待っててくれ!」


ジオは喜びながら家の中に駆け込み、すぐに何かを抱えて戻ってきた。

どうやら紙を抱えているようだ。


「これが母親だ。」


広げられた紙には女神と見間違うような美しい女性が描かれており、穏やかな笑みを浮かべる

その女性の耳は尖っており、獣人のような獣耳は存在しないようだった。


「これって――」

「「エルフ!?」」


全員が顔を見合わせながらそう言うと、ジオは目をぱちくりと瞬きさせながら言った。


「あれ?言ってなかったか?この人が俺の妻でありジアの母でもあるシルマだぞ。

裏にはシルマの住んでる所と周辺の地図も書いてあるから、近くに行くことがあったら寄ってくれ。

ついでに、自慢ではないがこの絵は俺が描いた。どうだ?上手いだろう?」


その一言に全員が言葉を失う。

最初に沈黙を破ったのは強志だった。


「お…奥さん?ジアの母ってことは…ジオさんってジアのお父さん!?」



驚きのあまり大きい声を出してしまった。


「あれ?それも言ってなかったか?そうだ。俺はジアの父であり師匠でもあるジオだ。」

「ジアがちっちゃい頃、修行をするなら今日から『師匠』って呼ぶんだぞって言われたので

今まで師匠と呼んでました!」


またもや全員がたっぷり5秒ほど言葉を失った。


「ハハ…おらたちが知らなかったこと、いっぱい知れただ…」

「ホント、私もビックリですよ…」

「ふむふむ、なるほどね。最初に出会ったとき、何故ジアが空間魔法を使えたのか謎だったけど、

そういうことだったのか。確かにエルフの血があるなら魔法もそこそこ使えるね。」

「ダメだ、俺には情報量が多すぎて理解できない…」

「実は僕もあんまりわかってない。」

「ピィ…ピュピュイ…」


ジオとジアは親子そろって苦笑した。

やがてジオが夜が明けつつある空を見上げてから言った。


「まぁ、そんなこんなで…うちのジアを、頼む。」

「よろしくお願いします!」

「…はい、絶対安全とは言い切れませんが、俺たちなんかでよければ…」

「絶対安全なんて自信持って言えるやつのほうが心配だぜ。」


この日、勇者ジェイマー率いる5人パーティーに新たな仲間が1人加わったのであった。

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