慣れない仕事
『closed』と書かれた木札を裏返し、『open』と書かれた面を表向きにする。
店の前にいた鳥が鳴きながら飛び去った。
ここは{ジオ武具店}。鍛冶師ジオの店。
ジオの骨折も治り、今日から営業を再開した。
「いらっしゃいませーっ!」
ジェイマーの声でお客さんが来店した事が分かる。
リハーサルで何度も接客の練習をしたとはいえ、実際の客は予想外の質問や行動もする。
さすがのジェイマーも緊張してガチガチに固まっていた。
「ありがとうございましたー…」
客が店を出ると、ジェイマーは大きなため息をついた。
「はぁ…接客ってかなりしんどいよな…これも慣れれば楽になると思うが…。
もしカズヒコがここに残って接客してたらどうすんだろうな…」
2週間ほど前に旅立った和彦の姿を思い浮かべながらふとそう呟く。
「カズヒコさんは接客よりも警備の方が向いていますよ。いつも自分の思った事を正直に話されますし…あ、愚痴じゃないですよ!?ただその…正直な方だからと…」
「わかってるわかってる。そんな事より、サクロは接客の時どうする?」
「私は…私はなるべく笑顔を保ってお客さんのお話をよく聞いてから
よく考えてお答えしていますよ!」
彼女も少し緊張しながら接客をしているのだろう。接客している時は目が笑っていないようにも見える。
「そうか…笑顔か…そういえば全く気付かなかったけど笑顔じゃなかったな、俺。
…俺達がこの調子じゃ、アイツらは今頃工房で大変な目にあってるんだろうな。」
その頃、工房ではジェイマーとサクロ以外の3人とジオが必死に働いていた。
…強志とヘクセは魔法を使っているが。
「はひ~っ…おらもう疲れただぁ…」
肉体労働を任されたカインは開店から1時間も経たないうちに弱音を吐いていた。
「どうした?もう疲れたか?…まあ無理もない、少し休憩していいぞ。」
「はぁ…僕もそろそろ休憩しよう…」
カインと一緒に休憩を始めるヘクセ。
彼は魔法の扱いが上手いので強志が考えた【コピー】を教えてもらっていた。
だが、そう簡単にはいかず長時間魔法を使用していたので魔力切れになりかけているのであろう。
「僕はまだ大丈夫だけど…ヘクセが休憩するならその間に武器作っちゃうね。」
「お、いいねぇ強志君。俺も負けてられないな。」
とジオもやる気を出した。
「師匠!」
「のわっ!?ジ、ジアか。ここに入るなと言ってるだろうに…」
「あ、いや…その…どうしても【アイスジャベリン】が上手くいかなくて…」
彼女は今までは接客をしていたが今はジェイマー達がその仕事をしているので外にでて魔法の練習をしている…が、時々うまくいかない時がありそのたびにジオの元へやってくるのだ。
「わかったわかった。悪い、あとはツヨシ君に任せた。」
「わかりました。任せてくだい!」
ジオは強志に視線を送ると、ジアに連れられて外へ歩いて行った。




