働く
「だぁ~っ、終わったぁ~…」
1人工房に残り、永遠と魔法を使用していた強志は溜息をこぼしながらそう呟いた。
窓の外を見ると、夜が明けて朝に…いや、昼になっていた。
最近使えるようになった【コピー】という便利な魔法により、材料とコピーする物さえあれば魔力切れになるまでいくらでも同じものを作り出せるとんでもない魔法なのだ。もちろん消費する魔力も大きいので連発はできない。時間がかかったのは主にこれが原因だ。
ぐううぅぅ…という情けない腹の音が聞こえ、空腹に気付く。
ひとまず報告する為に工房を出ると店のカウンターにサンドイッチが置かれていたのでそれを食べてから店を出た。
ジアのいる家に着くと扉をコンコンとノックする。
「はーい!」
バコンッ!という音が響く。
勢いよく開かれた扉に跳ね飛ばされ、腰を地面に強打する。
「いてて…前にもこんな事があったような…」
「あ、ごめんなさい!!ところで槍はできましたか?」
「なんとか50本できたよ。」
「おーっ!すぐに師匠に報告しなければ!どうぞあがってください!」
家に入るとジアが、師匠!もう50本完成したそうです!!
と大声で叫ぶ。枕をジアに投げながら師匠――ジオは口をほころばせた。
「思っていたより早いね。少し見せてくれるかな。」
「こちらです。」
[ストレージ]から1本の槍を取り出す。
ジオに手渡すと彼はチェックを始めた。やがてチェックを終えると強志の腕を認めて冗談半分でこう言った。
「…もしよければ俺の店で働かないか?」
しかし強志は冗談だとは知らずに。
「僕でよければ働きたいです!」
と答えた。さすがにジオは冗談だと言ったが、強志は働けるのであれば働きたいといったので即戦力として雇われる事になった。…もちろん強志はカナゴに言われたので武器などを販売しなければならない。それを忘れずに覚えていたのでここに残ろうと考えたのだ。
その後、家に戻ってきたジェイマー達に報告。もちろん驚いていたが
「あ、じゃあ俺もお金ないんでやります。」
と言ってジェイマーも入りたい様子。
さらにジェイマーに続いて和彦以外も手を挙げる。
「カズヒコ、お前はやらないのか?お前だってあまりお金ないだろ?」
「悪いが俺は長い間とどまるつもりはない。新たなムーブモンスターが起きた時に動けないからな。」
「じゃあ、俺達だけ残る感じか?」
「あぁ。お前らに付き合うほどヒマじゃない。…近くを通る事があったら顔くらいは見せる。」
そう言う和彦にジオは5人も従業員が増えて嬉しいのか、ニコニコしながらある物を持ってくるようジアに頼んだ。
ジアが持ってきた物は2つの方位磁針だった。
「その方位磁針は2つで1セットになっていてね。相手のいる方角を示す物だ。これを持っていきなさい。」
ジアに渡すように言い、ジアが和彦に方位磁針を手渡す。
「…一応礼は言う。」
「こっちもお世話になったからな。…これからもお世話になるけど。」
「まだしばらくはこの村にいる。何かあれば訪ねてくれ。」
こうして強志達はジオの店で働くことになった。




