さようならエッドー
昼食を食べ終えた強志は太郎が案内人としてついているッジェイマー達と共に行動する事にした。
店に売られている雀の串焼きや川魚の串焼きなどのグルメも堪能しつつ、いつ次の村へ行くかを歩きながら話し、やり残したこともないので明日出発する事に決めた。
やがて日も暮れて家に戻り翌日旅立つ事を里長に話すと
「短い間だったが、世話になったなぁ…」と言われた。しかし同時にこれは太郎との別れでもある。
太郎は一人っ子なので当然次の里長になる者なのだ。よって里にとどまる事しかできない。
その日の夜、布団に入って目を閉じた太郎の瞼の裏には強志達との
短くも濃い思い出が浮かんでいた。
翌日、早朝から活気に包まれたこの里を後にした。
太郎は姿が見えなくなる最後の最後まで笑顔で力強く手を振っていた。
「なんだか…すごい所だったな…俺、あの雰囲気好きかも。」
「わかるよ~…僕ももう少しいたかったかもね。」
「それはおらもだよ。」
「でも仕方ないですね…次は獣人のティオール村です!ほら、みなさん行ったことない場所ですし楽しんで行きましょう!」
サクロが皆の気合を入れなおそうと頑張ってくれているので強志も手伝う。
「そうだよ!皆人間族の領地を旅してばかりで飽きてきたでしょ!次の村は違う種族が住む村だし
全く違う文化が見れるかもよ!」
と強志が言ってみたものの
「いや、あまりかわらないぞ。少なくとも俺が行ったことのある獣人の村は人間族とあまり変わらなかった。強いていうのであれば少し自然が多い程度だ。」
という和彦が空気の読めない発言。
「ま、まあとにかく行こうよ!」
帰りは刀に使用する金属を採掘するためにつくられた坑道が向こう側までくり抜かれているということを教えてもらっていたのでそこを通って大幅なショートカットをした。
「最初からここ使いたかったよね。」
と強志が言うと
「俺もこんな所があるのは初めて知った。」
と和彦に反論された。
やがて出口が見えてくると小走りで外へ出た。
「わぁ…もうこんな時間…」
「中にいるとわかりませんね…」
真っ赤に輝く夕日の眩しい光が6人の目を容赦なく刺激する。
「うわっ…眩しっ…」
「長い間あんな薄暗い場所にいたんだ。そのくらい当然だ。」
和彦は全く眩しくないのか、スタスタ歩いている…が。
「そういう事言うクセにカズヒコ君も薄目じゃないか。」
「眩しくないとは言っていない。」
「そんなことより早く野営の準備しておかない?」
「あ、そうですね。そろそろ準備をしましょう。」
サクロが野宿に使う道具を[ストレージ]から取り出すと、6人はそれぞれ準備を始めた。




