予想
「久しぶり…とでも言っておこうか。」
気が付くと、目の前にはカナゴが立っていた。
「お久し振りです。」
「今度は何だ?」
「こっ…ここは何処でござるか!?」
強志は自分とカナゴ以外の声がする事に思わず
「えっ?」
と声を漏らした。
「お前らもいたのか。」
「せっ…拙者、待ったく状況が掴めないでござるよ!?」
「そっか、君はまだ来たことが無かったね。」
色々と説明された太郎は目を丸くし、口も空きっぱなしであきらかに混乱している。
「つまり、貴方様が女神様という事でござるか?」
「うん、そだよー。」
「なんと…にわかに信じられないでがざる。しかし…このような空間に突然転移させることなど
神様にしか…」
「ま、信じられないのも無理はないよね~。あ、ちなみにこの事を他の人に言うと罰が当たるよ。
あまり知られたくはないしね。まぁ、言ったところで普通は信じてもらえないけどね。」
太郎が少しだけ納得したようにうなずくところを見たカナゴは、次の話題に入った。
「さてさて。君達はキングトロールに挑むらしいね。」
「はい!…僕なんかじゃ倒せるかはわかりませんが…」
「俺は普通のトロールとは戦った事があるが、中々厳しい戦いだった。」
「キングトロールの情報を教えてあげようかと思っ――」
「是非教えてください!」
「教えて頂きたいでござる!」
少々食い気味で解答する。カナゴと和彦の顔が一瞬引き攣ったように見えたが、きっと気のせいだ。
「そ、そんなに教えてほしいなら教えてあげるけど…」
「ありがとうございます!」
「ありがたや…」
「お前ら…少しは落ち着け…」
和彦の声など全く気にせずに強志は
「一体、どのような情報が?」
と催促している。
「うん。今から3つの情報を教えるよ。
まず1つ。キングトロールは普通のトロールを3体連れているらしい。ちなみに、これはつい先程
判明した。この前まではいなかったからね。
2つ目。これはあくまで予想だけど、このトロール3体が出現したのは君達が討伐しに行くことを
知っている何者かがキングトロールと同じようにムーブモンスター現象…だったかな?それを意図的に起こして妨害をしている可能性があるという事。これがもし予想で終わらず、現実となったら
厄介な存在を敵に回しているかもしれないね。」
最後に3つ目、と言うカナゴの顔は微笑んでいた。
「君達ならやれる。キングトロールにやられるほどヤワな人間じゃないってこと、
この僕が証明するよ。」
「カナゴさん…!」
「ほう。俺は証明されなくともヤワな人間ではないがな。」
「カナゴ様…!頂いた情報、上手く使用して必ずや勝利を収めるでござる!」
カナゴは大きくうなずくと、手を振って
「頑張ってきなよ!」
と言った。直後、3人の視界は真っ白になった。
「…一応調べてみようかな…」
ムーブモンスター現象。この現象が何らかの自然現象ではなく、意図的な物だった場合の事を
考えたカナゴは、できる限り自分にできることをしようと思ったのであった。




