エキゾチックジャパン
「なんだこの床!!」
ジェイマーが立っているのは畳の上。この部屋はいわゆる和室というやつだ。
「それは『畳』って言って、イ草っていう草でできてるらしいよ。」
「へぇ~…って、なんで知ってんだよ!」
「なんか知ってた」
「あ~…時々あるよなそういうの。」
「ツヨシさんツヨシさん!これは一体なんですか!?」
キラキラと目を輝かせながら白い物体を持ったサクロが問いかけてきた。
「それは『布団』だよ。ベッドのように、この上で寝るんだ。」
「フトンですか…床に敷くのですね?」
「そんな感じ。」
「やはりこれも…?」
「うん。なんか知ってた。」
「時々ありますよね~」
(いや、何このやり取り…)
およそ13畳の部屋の中には他にも壁掛けや常緑桜の生け花、灯篭と座布団など、様々な家具が設置されている。
強志は小声で
「ねぇ和彦、なんでこの世界にこんな時代劇にでるような所があるの!?」
「俺達と少し似ているんだが…」
「へ?」
「必ずしも俺達と同じ時代から異世界に行くと思うか?」
和彦の一言で強志は悟った。
「あぁ…つまり、江戸時代の人が転生してきたって事?」
「そういう事だ。だが、江戸時代は転生ではなく異世界転移だな。」
「転移…つまり、その人達は一度も死んでいないって事?」
「あぁ。何故江戸時代なのか、と俺は女神に聞いたが彼女はこう答えた。俺達のように転生した人の憩いの場として使われ、尚且つこの世界を壊さないようにとも言っていたな。」
「なるほど…でもそれって向こうにいるご家族たちは…」
「…神隠しは知ってるか?神隠しの真実がこれだ。向こうではきっと神隠しだの天罰だの言われてるだろう。無論、ここには転生者の子供や転生者以外の奴もいるがな。」
神隠し。昔から神によって何の前触れもなく人が消されるという事は言い伝えられていたが、本当に神によるものだったとは。
「ま、ここにいる人はそれなりにやっていけてる。侍も鍛冶師もいるからな。」
「鍛冶師!?刀の鍛冶師かぁ…まだ刀は作れないからなぁ…」
鍛治の事を聞いた強志は、少しだけ期待を膨らませたのであった。




