同郷
朝になると、皆は起きていた。
「あれ?皆起きるの早くない?」
「違うだよ。ツヨシが遅かっただ。」
「ツヨシ君、時計見てみなよ。」
ヘクセが指した時計を見ると、すでに午前9時だった。
ちなみに強志は普段、遅くても7時には起きる。
「まぁまぁ、昨日は中々大変でしたし…」
「本当に大変だったぜ…ヘクセ、前衛って、かなり怖いぞ…」
「ま、僕は後衛だから前衛の気持ちは考えたこともないけどね。」
「結局昨日の少年は何者だったんだろうな。」
「さあ…?あ、僕はご飯食べてくるね。」
「おう、いってら。」
扉を開けて食堂へ向かうと、朝食のパンとシチュー、サラダを受け取って席につく。
パンをシチューに浸して食べていると、新たに客が来た。
どこか見覚えのある黒髪を見ているとふと目が合った。
「貴方は昨日の!昨日は助けて頂きありがとうございました!」
「ん?お前は昨日の弱小パーティーの一員。」
「じゃ、弱小じゃないです!」
「あんなドラゴン一匹も倒せないような奴がよく言う。それにしても、同じ宿にいたとは偶然だな。」
相変わらず横柄な態度で話し続ける。
「…まぁ、俺はもうこの村を出ていくがな。」
「何故ですか?」
「お前に答える義務は無い。…が、俺の予想が当たっていれば教えてやる。」
「予想…?」
「お前の名前を聞けばわかる。お前、名前は?」
「僕は――鍛治野強志です。」
少年は「なるほど…」と呟くと、驚くべき事を強志に告白した。
「――お前、日本人か?」
強志は約2年以上その単語を聞いていなかったため、驚きのあまり一瞬硬直した。
(今…日本人って…)
「…その反応は、俺の予想が正しかったらしいな。」
「は…はい…」
「ったく…ならいいか、よく聞け。お前もカナゴという女神に会ったよな?」
「つい最近…」
「そいつからこの世界の異常事態の事については聞いてるな?」
「異常事態の原因解明ですか?あ、僕には店を開いて武器を作ってほしいとも言われてます。」
「…そうか。だが、原因解明は同じか。俺はその原因解明の為、この村に来た。すなわち他の所へ行くという事は…」
「…また、他の所で出たんですね。」
少し間をあけてから少年が口を開く。
「…ああ。そこに行く。お前も来るか?」
「もちろんです!」
朝食を食べ終えた強志は、ジェイマー達の部屋へ戻った。
「あ、君は!」
少年の存在に気付いたジェイマーが驚く。
「お前ら、旅してるんだってな。強志から聞いたぞ。次の目的地がある。ついてこい。」
「…唐突すぎない?」
彼の事を知らないヘクセはどういう状況なのか全くわからないまま混乱していた。




