VS.ナイトメアドラゴン1
「ちょ…ストップ。足音が聞こえる。」
ジェイマーの言う通り足を止めると、確かにドスン、ドスンと足音がした。
足音の鳴る方向を見ると、漆黒の鱗で身を包み、赤く光る獰猛な目を持つドラゴンがいた。
「うわっ…アレがナイトメアドラゴンか…確かに悪夢みそうなくらい怖いや…」
「あーっ…ダメだっ!僕はここで待ってるよ!」
「ヘクセさん!もちろんついてきてもらいますよ!」
笑顔でヘクセの腕をつかむサクロ。ヘクセは若干涙目である。
「ヘクセ、おらが守るからでぇじょぶだよ。」
「あ~っ!もういいよ!わかったわかった。僕も行くから!」
仕方なく了承したヘクセ。しかし、この大声はナイトメアドラゴンに届く。
「気付かれた!奇襲を狙いたかったがやむを得ん!皆、行くぞ!」
茂みから飛び出すと、配置につく。
「武器を構えろ!」
ジャキイィンという音を鳴らしながら剣を抜く。
隣にいるジェイマーは少し震えているようにもみえる。
「ギュルオォオォオォ!」
赤く光る目で鋭い視線を送ってくる。威圧感がすごい。
「来るぞ!」
「【セイント・アロー】」
サクロが神聖杖を掲げると、ドラゴンの頭上に軽く30本は超える光の矢が出現する。
それらが一斉にドラゴンへと直撃する…が、傷一つつけられていない。
「【ヘルファイア】」
ヘクセの杖から大きな火の玉が出現し、ドラゴンに向かってまっすぐ飛んで行く。
「【トルネード】」
さらに小規模の竜巻が発生し、周囲の小石やヘルファイアを巻き込んで炎の渦となる。
「グルアァッ!?」
炎の竜巻にはさすがに驚くが、ドラゴンは素早く横へステップ回避する。
「ぼ、僕がそんな簡単に躱せる攻撃をするとお、おお思うかい?」
「おーいヘクセ、格好つけるのはいいけど声が震えてるぞ。」
震えるヘクセはともかく、炎の竜巻はドラゴンを追尾し、ドラゴンに当たる。
「ギュルアァッ!」
炎の竜巻に飲み込まれたドラゴン。最後に発した声は断末魔だろうか。
「やったか!?」
「ジェイマー…それ…」
フラグだから!という言葉を待たずに炎の竜巻は霧散し、中から赤い光が見えた。
「ま、まさか…」
「…あ~あ…ちょっと怖いけど…行こう!」
「お、おう!」
ジェイマーと強志が走り出す。
「【スピードアップ】!【グレードアップ】!…はぁ…はぁ…」
「サクロ、でぇじょぶだか!?魔力切れ起こす前に、一度休んだほうがいいだ!」
「は、はい…」
魔力切れとは、魔力の使いすぎにより起こる強い倦怠感の事である。
基本的に魔力切れを起こすと気絶してしまう。
「「ありがとう!」」
「ジェイマー、あの首の辺りが柔らかい!刺して!」
「おう!任せとけ!」
首へ向かって一直線で走るが…
ブゥン!という音がなると同時にドラゴンの尻尾が振られる。
「うおわっ!」
ギリギリでジェイマーは回避に成功したが、ドラゴンの口からは黒い光が出てきている。
「カインッ!」
「わかってるだ!【グレートシールド】!」
――直後、ドラゴンの口から黒い玉が発射され、カインの盾に当たる。
カインが大きく後ろにのけぞっている時点で、どのくらいの威力だったかは一目瞭然だった。
「これは…油断できないね。ジェイマー、気を付けてね!」
「…ああ、言われなくてもわかってる!いくぜっ!」




