異世界料理はシンプルでも絶品な事がある。
「サクロ、手伝うよ!」
「火が使いたくなったら言ってね。すぐ行くから。」
「え、ヘクセ…それだけ?手伝わないの?」
「まぁまぁ。ヘクセさんはいつもの事ですので。」
「いつもなんかーいっ!」
思わずツッコミを入れてしまった。
「ハハハ!こりゃ手厳しいなぁ!…まぁ、ちゃんと火は出してるから…」
そう呟くと、ヘクセはジェイマー達の所へ小走りで走って行った。
…まぁ、50メートルも離れていないけど。
「それでは始めましょうか。」
「うん!」
まずは野菜を切る。見た目はレタスのようだが…
「これって、何という野菜ですか?」
「それは[キャレス]と言って、パリッというか…シャキッっというか…
食感がよく、少し苦味がある味が特徴的で主にサラダなどに用いられます。
残念ながら今日は食糧が尽きかけているのでサラダはできませんが…
メインのお肉の盛り付けとして出そうかと。」
(名前からしてレタスとキャベツが合体した感じかな…)
「大体このくらいに切ればいい?」
「はい。丁度いい大きさです。」
…しばらくして。
「ヘクセさんを呼んで頂けますか?」
「もちろん!」
ヘクセに火を使うので来てほしいというと、
「あと少しでジェイマーと腕相撲で勝てたのに…」
と、文句を言いながらも来てくれた。
…まぁどこから見ても勝ち目はないように見えたけど。
「【ミニファイア】」
ボワッとヘクセの指から火の粉が出現し、準備しておいた薪に当たってしばらくすると少しずつ火が付き始めた。
「よし、じゃあ僕は今度こそ勝ってくる。」
グッと親指を立ててヘクセはまた戻って行った。
「ありがとうございます!」
サクロが「お肉を焼くのは得意なんです!」と言ってきたので任せ、
僕はとなりで出来上がるのを待っていた。
「このお肉ってどんな味ですか?」
「この前馬車に乗った行商人さんから買ったのですが、
このお肉は柔らかくて肉汁の多い[森兎]のお肉です。」
「兎にしては大きくないですか!?」
そう、この肉は牛の半分ほどの大きさなのだ。
「そうなんですよね…私も初めて知った時は驚きましたよ…」
そんな会話をしているうちに肉は焼けて、食器の上にキャレスと森兎
を盛り付ける。
「できたよー」
僕の一言で3人が集まる。
出された机と椅子に座り、
「「「「「いただきます!」」」」」
と、全員で並んで言う。
(まずはキャレスから食べてみよう)
パリッとした食感の中に少しだけ苦味を感じる。サクロが言っていた通りだ。
次に森兎の肉からだ!
「はむっ…ムグッ!?」
とろけるように口の中に溶けいき、肉汁があふれ出す。
「大丈夫かい?」
「あ、違うんだ。あまりにもおいしくて驚いちゃった。」
「ま、俺も実際初めて食べたが、噂をはるかに超えるうまさだな!」
「おらもはじめてくっただ。だけど、うんめえなぁ。」
「私は覚えていませんが小さいころに一度だけ食べたことがあるそうです。とても美味しいですね!」
「僕はこのあいだの街でこっそり食べに行ってたから味は知ってるんだよねぇ。」
「お、お前ぇぇ!途中で消えたと思ったらそんなことしてたのか…くそぅ…なんで俺も連れて行かないんだよ!」
そんな会話をしていると、徐々に月が沈んで行く。
辺りが真っ暗になったので、今日はここらへんで寝ておこう。
という話になりジェイマーだけが見張りの件を思い出して落ち込むのであった。




