表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
神宮寺 真冬  作者: 闇雲
3/16

悲鳴を奏でるピアノにて③

「早速ですけど、持ってきた『ネタ』の話をして……良いですか?」

「もちろん。」

「この高校の……音楽室の話です……。」

「……ああ、あのありきたりな話?」

真冬も羽水も知っている。

『そういう話』があるということは。

というか、聞かない方が珍しいのではないか。

どんな学校にもあるような、退屈で使い古されたネタだ。

「はい……夜になると……音楽室からピアノの音が聞こえてくる、という……昔からある『噂』です。」

「そんな話をここに持ち込んできたのは君が初めてだよ。

でも悪戯が好きってわけでもなさそうだ、一体どうしてそんな話を持ち込んできたの?」

別に威圧したつもりはないが、如何せん顔が冷たいので恐怖を感じたのだろう。

夢は少し縮こまってしまった。

「わッ……私……合唱コンクールでピアノの担当になって……触ったんです……ピアノに。

普通……そんなことで誰も……違和感なんて感じないと思うンですけど……私、感じたんです……。

何と言うか……この世のものだけれど、この世のものじゃないような……そんな不思議な感覚を……感じたんです……。」

「ふぅん、でもそれだけじゃあまだ浅いね……。

誰かに見られている感覚がするというのはよくあるけれど、それも直接的に霊感と関わるものとは限らない。」

「……ええ、でも問題はそれからなんです……無性にピアノが弾きたく……。

いえ、そうじゃないんです……心の中では弾きたくないと思っていても、体が弾こうと弾こうと動くんです……。

まるで音楽室のあのピアノに吸い寄せられるように……引っ張られるように……。

それが……日に日に強くなってる気がして……。」

「……。」

既に真冬は聞き入っていた。

まさか、ありきたりな話がこんなに興味深い話に化けるとは。

「授業中でも家で寝ている時でも、お風呂に入っていても……とにかく時間を選ばずに襲ってくるんです、衝動が……。」

「なるほどなるほど、そこまでくると確かに……。」

「これが『噂』と関係あるとは限らないし……もしかしたら私、精神の病気なのかもしれません。

けれど……調べてみたいんです……この現象を……。」

「でも、夜の学校なんてセキュリティがあるから入れないっすよ。」

「……じゃあ、私が行ってくる。」

「えッ、本気っすか部長……オレの話聞いてましたか!?」

「この私に不可能の文字はないの。

セキュリティなんてものは破るためにあるの。

……分かる?」

羽水と夢は同じタイミングで首を横に振った。

ただ、彼女はこれまでにも何度か夜の学校に忍び込んだことがある。

セキュリティを破ることが出来るだけの『能力』を持っている。

だからこそ自信があるのだ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ