ファンデーションの砂漠に閉じ込めて②
袋布 斎造。
1972年東京都生まれ。
九十島芸術大学の洋画コースを卒業後、『本当に真っ白なキャンバス』を求めてこの片田舎にやって来た。
その際、妻・袋布 哀那(旧姓:川原 哀那)と出逢い意気投合、その後結婚。
しかし哀那は結婚から間もなく死亡し、独り身に。
以降は街の外れにある『廃墟』で創作活動を続けている。
「……この男について取材したくて、でも一人だと怖いから私に頼った……ってことだよね。
確かに私にはそれだけの実績がある。」
「……袋布はきっと『大きな秘密』を隠しています……。
私は彼を取材することで多大な利益を得られるでしょう。
その利益の対価は金銭では到底払いきれないでしょう。
しかしアナタは金銭や実利ではなく、『情報』に真価を見出だしている……。
私はこれが互いにとって有益な経験になると思い、アナタを誘ったんです。」
間違ってはいない。
確かにこの斎造という男のことはとても気になる。
何故かは解らないが、とかく彼女の『勘』が杮に同行すべきだと告げてくる。
「……分かった、同行する。」
それを聞いた杮はあからさまに嬉しそうな顔をした。
他人の思惑通りになるのは気に食わないが、最優先は知識欲だ。
口角をヒクヒクさせながら、真冬は熱々のカフェオレに目をやった。
自分色に染めたくなるまっさらなキャンバス───。
彼がこの街に来た理由には、共感せざるを得ない。




