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家令と一緒にサロンに入ると、父上と母上と一番上の兄上がいた。二番目の兄上は騎士団に所属しているため、昼間はいつも家にいない。
三人に何があったのかを説明し終えると、母上は頰に手を当て困ったように首を傾け、父上は額を押さえてというか頭を抱え、一番上の兄上は天を仰いで大きなため息をついた。
「あらあら」
「はあ、お前…」
「うわぁ…」
なんでだろう。
家令の僕を見る目にも少し憐れみが入っている気がした。
サロンに来た時、父上達がまとっていた殺気立った雰囲気は霧散しているけど、変わりに残念なものを見る目で見られている気がする。
「とりあえず謝り倒して来い」
「そうねえ、それがいいかしら」
「ああ、謝罪一択だな」
謝まらないといけないらしい。
泣かせちゃったから謝るのはまあ当然なんだけど、一つ疑問がある。
「謝るのはかまいませんが、一体何を謝ればいいのでしょうか」
「ああもう、お前本当バカ」
もうどうしようもないな、といった調子の兄上の言葉にムッとしたけど
「そうねえ」
と母上が同意をし、
「まさかここまでとは」
と父上に嘆かれた。
わけがわからずむくれていると、兄上が嫌々といった感じで口を開いた。
「多分お前、婚約初日に堂々と浮気宣言したクソ野朗だと思われてるぞ」
最初、何を言われたのかわからなかった。
浮気?誰が?僕が?え?なんで??
口を開けてぽかんとしている僕に、うんざりした顔で兄上が説明する。
「大事な人ってのは普通恋人に使うものなんだ」
よくわからない。
「え?でも僕は父上も母上も兄上達も皆大事ですよ?」
首を傾げると、兄上はしかめたままの顔を少し赤くした。
「いや、まあそういうのもあるけど。その話の流れだと恋人とか愛人って意味になるんだよ」
少し勢いを落とした兄上の言葉を、頭の中で反芻する。
そして理解できた途端、血の気が引いた。
「あ、兄上。一体僕はどうすれば…」
とんでもない誤解だ。
あまり興味も機会もなかったから、僕には今まで恋人なんていたことがない。たまに夜会で可愛いなって思う子はいたけど、その程度だ。
それに僕はどうせなら幸せな家庭を築きたいんだ。そのためには、政略結婚だろうと相手を大事にするつもりでいるのに…。
「どうしてそんな誤解を…」
ショックで頭がうまく回らない。
「お前の言い方がとんでもなく間違ってたからだろう」
「だから早く謝ってこい」と兄上がため息をついた。




