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とある山道
「これは失礼。私はサスラル山賊の者です。」
赤と黄色と黒のシマシマ模様のハチマキを肩に巻いている仮面の女が一礼をする。
「ここは、オレらの縄張りだぞ。進入しない協定があっただろ?」
「なるほど。なるほど。確かに協定はありました。
でも、約束は破るためにあるんです。だって私達は山賊だから」
「てめぇには、仁義という文字はないのか」
「さぁ」
手を広げてオドケル。
「貴様。殺してやる。早くここから出せ」
斧を何回も叩きつけるが、結界が全く壊れなかった。
「う~ん。なんか面白くない。こんなにあっさり捕まえるとは思わなかったから。
よし。今からゲームをしよう。この中から1人を出してあげる。
仲間を呼びに行って、連れてきたら全員開放してあげる。
ただし、この砂時計の砂がなくなったら、1人殺す」
「俺様に決まっているだろ」
大きい声で黒牛が言った。
「それは駄目。どうせ私達に攻撃しようとするでしょ。そんなのつまらないもん。
だから、アジトに知らせるのが速い者を選んだほうが良いわよ」
小牛の部下達はどうするか話し合っていた。
「ブーブー。時間を掛けすぎね。モリー」
「了解。ジュエルム」
1番端に居た子牛のモンスターの周りにだけ、新しい青い小さな結界に覆われた。
そして、徐々に小さくなった。
「何だこれ。」
興味本位で、徐々に小さくなる結界に触れた。
「ぎゃーーーーー」
触った指が酸によって溶けた。
「俺の指がーーーー。助けてくれーー。ウガーーーーー」
結界が小さくなり、ジュージューと子牛の体が溶け出した。
「た、た、す、け・・・・」
子牛が溶けてしまった。
周りにいた子牛達は、驚愕する。
「てめぇー。やりやがったな。俺と勝負しろ」
「ゲームをしないなら、これで終わりね」
「ちょっと待ってくれ。俺にやらせてくれ」
カンガルーの様な体型で、顔はテレビ画面のモンスターが言った。
「お前だけ逃げるつもりだろ。駄目だ駄目だ」
「俺の足の速さを知っているだろ。お頭の所へ直ぐに行ける。
どうだ。俺に任せてくれないか」
「何かってに言ってんだお前。」
黒牛が近づいて来た。
「黒牛様。この状況を打ち破るには、俺しかいません。
それに、結界を出た後、奴らが約束を破って殺されるかもしれません。
でも、俺は仲間を救うために行きます」
決死の表情だった。
「解った行ってこい」
「ありがとうございます。俺が行くから出してくれ」
「モリー」
「了解。デルデル」
テレビカンガルーの所だけ結界が無くなった。
そして、おそるおそる結界の外に出た。
「よし。みんな待ってろよ。直ぐに助けを呼ぶから」
結界の仲間に手を振った。
テレビカンガルーの背後から、地面に丸い影が近づいた。
「仲間を呼ぶから、コンパスの印を消すなよ」
「いいとも」
腕組みをして答える仮面の女。
テレビカンガルーは、後ろを見ながら警戒して離れて行き、魔法を唱えた。
「コンパスルン」
すると地面に赤い魔法陣が出現した。
そして、背後から近づいて丸い影が、テレビカンガルーの影に入った。
「じゃ。行くぞ。スピードキック」
ピョンピョン岩や地面を普通の走る100倍の速さで、カンガルーの様に飛び跳ねていった。
「さて。待っている間暇なので、皆さんに出られるチャンスをあげましょう。
それは、黒牛の首を取った者は出します。
また、黒牛は、部下を全員殺せば出してあげます」
仮面の女は、微笑む。
「誰がやるか。そんな事」
「そうだ。そうだ」
全員ブーイングだった。
「そう。じゃ。この砂時計のスピードを上げるしかないわね。」
砂時計にある黒いボタンを押した。
すると、落ちるスピードが倍の速さになった。
「この。ろくでなし。」
「お前は、悪魔だ」
悲痛な叫び
「あらあら。もっと速くして欲しいのね。しょうがないな」
ニヤリと笑って、砂時計のボタンを押した。
すると、最初の3倍の速さで落ち始めた。
ついに、砂がなくなってしまった。
「モリー」
「了解。ジュエルム」
一斉に逃げ惑うが、ロックオンされた者が小さな結界に覆われた。
徐々に結界が小さくなっていく。
「ひーーー死にたくないよ。ギャーーー足がーーー」
物凄い悲鳴を上げて、足の指からじわりじわり溶けて行った。
「ぎゃーー死にたくないよ」
泣いて必死に抵抗するが、どんどん体が溶けていき、
じゅーっと嫌な匂いが充満していた。
周りの連中は、顔をしかめてじっと見つめていた。
ある者は、余りのグロさに吐き出していた。
そして、溶けて、消えた。
「では、またスタート」
砂時計を上下逆さまにして、砂が落ち始めた。
部下達は武器を構えて殺気だった。
「お前たち、俺とやるつもりか。無駄なことはよせ。
俺に勝てるわけないだろ。・・・・う」
黒牛の後ろにいた部下が、毒剣で背中を刺した。
血が流れ赤くなる背中。
「若頭。あんたには悪いが、俺達のために死んでくれ。1対1で負けるかもしれんが
大勢なら、あんたを殺せるぜ。へへへ」
刺された所が、どんどん変色した
「ぐぐぐぐ。お前たち許さん。許さんぞ」
その言葉をきっかに、仲間割れが始まった。
とある部屋
「まだ見つからないのか。」
謎の人物が部下の報告を聞いていた。
「申し訳ありません。ダンジョンが沢山ありすぎて」
「全く、あのエルフのせいで計画が台無しだ」
「賞金をかけて、ルーレットベルトを探せば早く見つかるのでは?」
「バカモノ。他の者に怪しまれるだろ」
「失礼しました」
恐縮する部下。
「スザクドについては?」
「国内にはいませんでした。やはり国外かと」
「どこの国が怪しい?」
「やはり、ベールス国かと」
「フム。では攻め落とすか」
「自分の国にしてしまえば、捜査も簡単です」
「よし。分かった。行け」
「ハ。コンパスルン」
部下がその場から、消えて居なくなった。
「さて、どうやって攻めさせようかな」
アゴに手をやり、考え事をする謎の者
ダンジョン
「おお!!これで、部下が出来るんだな」
光が輝いて、2体のモンスターが出現した。
「おい」
ティラノサウルスの頭蓋骨、サベコマの所に行って呼びかけたが、ぐぅぐぅ寝ていた。
「お~い聞いているのか」
「グーグーググググ」
「何だこのモンスターは?」
「いつも寝てばかりで、たまに仕事をするピョ~~ン」
「敵が来ても寝ているのか」
「そうだピョ~~ン」
「ふー全く使えん」
「でも起きたら、使えるのだ」
「もういいや。次のモンスターに行こう」
スイカ砲の所に行った。
「よし俺の事をボスと言え」
「ああ!!何でテメェに言われなければいけねぇんだ。ぺぺぺぺ」
スイカ砲は不機嫌になって、タネの攻撃をしてきた。
「イタタタ。おかしい何でだ?全く俺の言う事を聞かないぞ」
「当然なのだ。カツカツと相称が悪いのだ」
「相性?」
「相性が悪いと命令を無視したり、能力が下がるんだな」
「そういう事は早く言え」
「だって、聞かれてないピョ~~ン」
おちゃらけるリング
「ちょっと待て。俺は統率力が高いんじゃなかったか?
だったら、何で言う事を聞かないんだ?」
「相性が悪いと忠誠度が低くなって言う事を聞かないのだ」
「そしたら、ステータス項目に追加してくれ」
「良いけど、何日分と交換する?」
意地の悪い声で聞くリング
「さっき、異世界の話しただろ」
「足りないぴょぉ~ん」
「じゃ、いいよ。付けなくても」
「本当に良いの?合った方が便利なのだ」
う~んと考えるカツ。
(確かに忠誠度や相性などを数値化出来るれば、モンスターを選ぶ時に便利だ。
ただなぁ~寿命が削られるのはなぁ~)
「ぐぅーー」
頭をフル回転させているとお腹が鳴った。
「お腹空いた。一旦休憩しよう。何か美味しい物はないかな?」
パネルを使って調べた。
丸印の中に酒と書かれたマークがあった。
名前:お酒の泉
説明:どんどんお酒が出来て、減る事がない不思議な泉
効果:ぐっすり眠れる。酒好きのモンスターが寄ってくる
費用:5000G
運用コスト:500G
「うぁ~ 異世界にきて酒が飲めるなんて最高~~~」
カツは酒が大好きだったので、テンションが上がった。
でもなぁ、高いなぁ。
でも、飲みたいなぁ。
でも 高いなぁ
「あーーーーーーーもーーーーーう。飲もう!!
お金は稼げば良い」
パネルを選択してA3の場所を選択した。
光が輝いてA3にお酒の泉が出現した。
「おおお!! やったぞ」
急いでA3の所にダッシュするカツ。
泉の所に石を置いて座った。
「あ~コップないかな」
辺りを見回したがない。
「下品だが直接飲むか」
しゃがみ込んで、ゴクゴクと飲んだ
「うめぇ~~~!!」
「おおお!!!」
飲んだ後、口から炎が出て驚いた
「何だこれ、お酒を飲むと炎が吐けるのか」
「そうだピョ~~ン」
「凄いなぁ。あとつまみがあれば最高なんだが。ポテトチップスとかない?」
「ポテトチップス?」
「じゃがいもをスライスして、油で揚げた物だ
それに塩をかけると美味しいだ~。食感と味は最高!!
酒と一緒に食べるのが好きなんだなぁ~」
「リングも食べたい食べたい」
「え?食べる事も出来るの?」
「さっき。エルフの死体を」
「ああ。そうね。」
死体の精気を吸って砂になったエルフを思い出して、テンションが下がった。
「早く作るのだ」
「でもなぁ。材料がこの世界になるかなぁ」
「市場があるピョーーン」
「そんなのがあるんだ」
「そうなのだ。そこに行けば、食べ物や武器や道具などが売ってるのだ」
「面白そうだな。じゃ。明日行くか」
「今、行くのだ」
「だめーーー。今日はお酒を飲んでぐっすり寝るの」
「行こう行こう」
「だめだって・・・・」
ぐぅぐぅ寝てしまったカツ。
「寝るなぁ~起きろ~」
全く起きない
「フンなのだ」
拗ねるリング
翌朝
「ふぁ~。なんだあれは?」
寝ぼけたカツだったが、宙に浮いている見た事がある物を取ろうとした。
ひょいっと動いて取れなかった。
「おかしいなぁ」
また、手を伸ばしたが、ひょいっと動いて取れなかった。
「お主、ワシに用か?」
「!!!!」
寝ぼけていたカツだったが、一気に目が覚めた。
「ビ、ビール瓶がしゃべった。ビール瓶が横向きに飛んでいる・・・
ぷはあはは。」
「笑うでない」
「無理ーーーだって。ハハハ」
お腹を抱えて笑う。
「お主、死にたいようだな」
直径10cmのビール瓶の口から、ポンとシャボン玉がプカプカ、カツの方に向ってきた。
「ワシの名は・・」
「何だあれ?」
「触ってみると面白い事が起こるのだ。」
「そう」
「聞け。ワシの名は・・」
そ~っとシャボン玉を触ってみた。
「ギャーーーーー」
カツは体中に電気が走った。
「ニョホホホ。面白いのだ。もう1回やるのだ。」
「だれがやるか。死にそうだったんだぞ」
「もう1回、もう1回、もう1回」
「フン」
誰にも相手にされなくて、いじけるビール瓶
「何で落ち込んでいるんだ?」
「さぁ」
「ワシの名は大和だ。わかったか。ハハハハ」
気を取り直して、邪魔されないように素早く答えた。
言った後、ようやく自分の名前を言えて、すっきりした様に見える。
「何でここにいるんだ?」
「それは、お酒の匂いに誘われたのじゃ」
「ふーん」
「なんじゃ。反応が薄いのぉー
ここの酒はワシの体にあっているから、当分ここにいるぞ」
「それは困る。これからダンジョンを作るんで邪魔だ。帰れ」
「ホホホ。それは無理じゃな。ワシはここが気に入ったから帰らん。
それに、帰る所もないしのー」
最後の方は寂しそうに語る。
「じゃ。俺の命令に従え」
「ほほほ。なぜお主のような弱い種族の部下にならんといかん。ダメじゃな」
「あ、そう。そういう事言うんだったら、酒の泉を消そうかなぁ」
ニヤリと笑うカツ。
「ヌヌヌ。お主ズルイではないか」
「だって、ここは俺のダンジョンだから、アンタに文句を言われる筋合いはない」
「ヌヌヌ。悪知恵が働くモグラめ。お主の部下にはならんが、協力はしてやる
それでいいな」
悔しそうな大和
「OK」
満足そうなカツ
これで戦力になるモンスターを味方に付けた。
だが、このことで、大きな事件に巻き込まれるとは知らないカツだった。