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だから、彼は嘘をつく  作者: ひろゆき
3/8

壱 (3)

 彼女の奇妙な条件に迷いながらも、彼女との日常を楽しむことにする彼。でも、それは悩みが消えたわけではありません。そんな彼の悩みが伝われば嬉しいです、よろしくお願いします。

 それからだった。彼女と屋上で会う機会が増えたのは。

 何を話すわけでもなかった。

 たわいない話。

 何も話さず、ただそこにいるだけ。空を眺めるだけ。そんな日もあった。

 お互いに告白について話すことはなかった。

 それでもよかった。

 そんなある日、ようやくお薦めの本の話を訊くことができた。

 あるとき、彼女は自分を“マネキン”だと皮肉ったことがある。もしかすれば、彼女にまつわる噂を耳にしたのかもしれない。

 しかし、屋上にいる彼女は、以前、書店で見た彼女に戻っていた。

 それが彼には嬉しかった。


「……いいのか?」

「……別に」

「別に、か」

「ーーそ。気にしてない」

「でも、その……」

「元カレってこと?」

「…………」

「どうだろ」

「どうだろ、って、そんなもんなの?」

「なんで、あなたがそんな悩んだ顔をするの」

「そりゃ、そうだけど」

「ねぇ、前に言ったでしょ。付き合うための条件」

「…………」

「忘れた?」

「忘れるわけないだろ。好きな人が別れるまでの期限付きって……」

「どう思う?」

「そんなこと言われたって」

「あれって、今考えると変な話だよね」

「……変って。お前が言ったんだろ」

「あれ、冗談だって言ったらどうする?」

「冗談……」

「何、真剣になってるの。バカみたい」

「バカって」

「……フフッ」

「笑うところじゃないと思うけど」

「まぁね」

「あ、そういえば、前にこの話したとき、何か言いたげだったけど、あれって、なんだったの?」

「あぁ、あれか」

「もしさ、もしもの話だけど、その、相手が別れなかったら、どうしたのかなって思って」

「……ずっと付き合えないないんだろうね」

「……それって」

「なんか、あの太陽みたい」

「……太陽?」

「そう。あれだけ眩しいくらい輝いているのに、絶対に手に触れることはできないんだから」

「……だから太陽か」

「そう」

「それって、辛いかもな」

「そうかもしれないね」

「でも、それでいいのか?」

「…………」


 今日も、これといった会話があったわけではない。

 ただ、空に佇む太陽を眺めているときだった。

 彼女がグランドを眺めながら、小さく声をもらした。

 彼女の声につられて、彼も立ち上がり、グランドを眺めると、彼は一瞬、息を呑んでしまう。

 部活で走る生徒を避けながら、歩いている二人の後ろ姿を捉えた。

 見るからに恋人同士の姿。

 それを見つけるのと同時に、彼の胸が緊張に襲われ声を失った。

 二人の仲は疑いようがないのだが、数ヶ月にもならない前に、彼氏の隣にいた女の子は、別の子が肩を並べていたと噂があった。

 彼は平静を装いながら横を見た。

 彼氏の隣にいたのは、マネキンと揶揄されている彼女。

 ……のはずである。

 実際に彼が見たことがなかった。噂でしか話は知らないが、遠離る二人の姿を遠い目で、それでいて儚く眺める彼女を目の辺りにすると、疑いようもなかった。 

 動揺している彼に気づいたように、彼女はこちらに振り向くと、慌てて目を泳がせる彼を見透かしたように髪を掻き上げた。

 確認したいはずなのに、唇が固く閉じられてしまう。

 髪を掻き上げた右手を耳に触れたまま、こちらをじっと見据えていた。何かを含んだように、広角を鋭く上げた笑みを浮かべて。

 吸い込まれそうな笑みに、彼は言葉を濁しそうになる。


 ーー でも、ちょっと信じられないかも。

 ーー 何が?

 ーー あの二人よ、土田ら。

 ーー あぁ。すぐに別れて別の子と、ってやつ。

 ーー 初めから両方と付き合ってて、一人に絞ったんじゃないの? あいつならやりそうだな。

 ーー でしょ。

 ーー でも、それだけじゃ、ないんだよね。

 ーー 何? ほかにも何かあるの?

 ーー 別れたって子、ほら、水原だったじゃない。

 ーー あれ? そうだっけ?

 ーー うん。そんなこと聞いたことがある。

 ーー でも、噂じゃなかったっけ。

 ーー 私の友達、仲よく喋ってたり、喧嘩してるところみたことあるって。

 ーー どんだけ、頑丈な神経してんだよ。それじゃ。

 ーー 厳しい言い方だな。

 ーー だって、そうじゃない。時間が経ってからならそうは思わないけど。

 ーー いいんじゃないの。水原も気にしていないなら。



 意識をしていないつもりでいても、時間が流れると否応にも、その日は近づいてくる。

 親友が命を落とした事故の日を翌日に控えた日。彼はもう一度、事故現場に足を運んでいた。

 数日前にテレビで見なければ、きっと、今日すら足を運んでいなかった罪悪感もあったが。

 それでも、事故当日に訪れる勇気はまだなかった。

 交差点付近、やはり静かで何も変わったことはなかった。違うのは彼の気持ちが微かに騒いでいるだけ。

 横断歩道の手前。

 彼は立ち止まり、辺りを見渡した。

 誰も彼やこの場所を気にしていない。何ごともなく通りすぎていく。

 目立つのは正直恥ずかしくて嫌だったが、これまで忘れていた罰なのだ、と自分を罵る。

 しかし、一度ため息をこぼすと、目を見開いてしまう。

 一本の花が横断歩道の脇に添えられていた。

 名前は分からなかった。

 赤い花びらの花はラッピングされ、申しわけなさげに置かれていた。

 彼の頬が少し緩んだが、それと同時に胸を痛める。

 誰もが忘れていたわけではなかった。

 安心する一方、拒んでいた自分がよりみっともなくなる。が、やはり心のどこかで嬉しかった。

 もう恥ずかしがっていられなかった。

 突然しゃがみ込んだ彼に、少なからず通行人の数奇な眼差しが注がれている。

 偶然か不運なのか、信号が赤になり、車道に車が並んでいく。何をやっているのか、と彼に興味を注いでいる視線を体が受けていた。

 それでも彼は動じず手を合わせた。

 目蓋を閉じると、暗闇に親友の懐かしい顔が浮かんできた。

 何を語りかければいいのか。

 ここに訪れるのに時間が経ったことを謝るのか。

 彼女から聞かされた条件を相談するべきか。

 脳裏に浮かんだ言葉を、どう組み合わせればいいのか、上手くまとめられず混乱してしまう。

 言葉を掴めないまま、手刀に力を入れてしまった。

 

「ーーそっか。明日なのね。事故って」

「今さら、何言ってるんだよ。前にもテレビでやってたじゃんか」

「まぁ、そうだけど。やっぱり気が引けるわね。そこで圭ちゃんが…… って思ってしまうと」

「ーーまぁ、それは分かるけど」

「やっぱり、行くべきなのかな」

「ーー花が一つあった」

「ーーん? あんた、行ったの?」

「うん。今日の学校の帰りに」

「へぇ、意外なのね。忘れていると思った」

「んなわけないだろ」

「それで、どうだったの?」

「だから言ってるだろ。花が一つだけあったって」

「じゃぁ、誰かが添えていたのね。家族の人か、それこそ友達か誰かが。けど、どうしたの、浮かない顔して」

「いや、ただ」

「ーーただ?」

「ただ、なんで花が一本だったのかなって思って」

「それは人それぞれでしょ。大体、なんの花だったの?」

「そんなの知らない」

「何よ、それ」

なんとなく気になっただけだよ」

「きっと、亡くなった人が好きだったか何かじゃないの。それだけ印象に残ってるってことは」

「なのかなぁ……」

「だったら、明日あんたも何か持って行けばどうなのよ。圭ちゃんの好きだった物とか」

「嫌だよ、そんなの。恥ずかしい」


 なぜか気になっていた。

 彼のように事故に背を向けている人に、何かを訴えているように添えられた一輪の花が。

 母親には気にかけた様子を見せなかった。


 それよりも、事故当日に行くことを促されて戸惑ってしまった。

 当日に向かうことを恐れていた。だから、前日にいっていたのである。


 ーー やっぱ、バカだよね。取る方も取る方だけど。

 ーー ってか、好きだな、その話。

 ーー そう? ただ、ちょっとイラついているだけ。

 ーー 土田が?

 ーー あいつは怒る以前に最低。

 ーー じゃぁ、水原?

 ーー 確か、水原って確か服部と付き合ってたって、噂じゃなかった?

 ーー いや、それって服部が一方的になってるだけだろ?

 ーー そんな雰囲気なかったけど、そうなの?

 ーー らしいよ。

 ーー けど、それならなんで土田に取られるかなぁ。

 ーー やけに突っかかるなぁ。お前、土田と何かあったの?

 ーー 別にただ女をバカにしているみたいで嫌なだけ。知ってる? あいつ、女子の間だと、結構嫌われてるんだよ。自己中で嫌だって。

 ーー あ、それは俺らの間でも一緒だって。

 ーー そんな奴に取られた服部くんもバカよ。ホント、意気地なしっていうか。

 ーー まぁまぁ。そんなに怒るなって。

 ーー それで、その服部は今日見てないな。

 ーー あいつ、そういえば昨日も早く帰ってたな。

 ーー 何か用事あったのかな?

 ーー さぁ?

 ーー あ、それと、噂だったら……。


 時間は巡る。

 拒む音。

 恐れる音。

 彼のように悲しむ者を置き去りにしながら。

 天井の蛍光灯。

 眩しい輝きを眺めながら、止まることのない時間を残酷に受け入れるしかない。

 親友の二年目の命日訪れていた。

 きっと何もなければ、素直に学校に行っていただろう。しかし、改めて親友のの死を認識させられると、忘れかけていた罪悪感に襲われて、“今日”が嫌になっていた。

 今日一日部屋に閉じこもっていた。

 もちろん、学校を休んだ理由は仮病でしかない。

 部屋にいる間、彼はずっと本読んでいた。

 雑誌。

 漫画。

 小説。

 何冊読んだのかは覚えていない。

 テレビやスマホを見る気にはなれなかった。普段、暇があれば何かしらのアプリを使っていても、今日だけは外部との接触を拒んでいた。

 それでもふとした瞬間、親友の声は脳裏に蘇っていた。

 そんなときだった。親友の恋人をふと想像してしまうのは。

 恋人ができた、と嬉しそうに電話してきたとき、執拗に彼女の写真を送ろうとしていた。

 それを彼はいつも拒んでいた。

 のろけるのがキモイ。

 別に可愛くないだろう。

 興味ない。

 口では皮肉っては強がっていたが、心のどこかでは嫉妬していたのかもしれない。その弱みを親友だからこそ、露呈するのが恥ずかしくて強情になっていた。

 展示会を見上げながら嘲笑する。情けない自分を思い出してしまい。

 結局、親友も一度も写真を送ってくることはなかった。

 普段からたわいない連絡はしていた。一方的に恋人の写真を送ろうとすればできたはず。

 それをしなかったのはなぜだったのか。

 今は分からない。

 ただーー

 ふと今になって、親友の恋人がどんな子だったのか、急に気がかりになった。すると、意識に反して、事故現場が浮かんでくる。

 あの花は誰かの恋人に贈られた物なのか、と。

 思い描いた関係にかぶりを振る。

 そんな偶然はあるわけがない。

 脳裏で笑いながら否定する親友の顔が、事故現場の光景を掻き消す。

 そうだよな、と納得したあとに、親友はさらに口を動かして問う。

 何度も聞いた質問。

 お前には好きな子はいないのか、と。

 彼は鼻で笑い、親友の顔を消した。

 そんな奴はいない。

 と、昔ならすぐに憎らしく反論していた。

 今、実際に問われると……。

 ふと真面目な表情になり、唇を強く噛んだ。眩しいはずの蛍光灯をじっと見詰めてしまう。

 霞みそうな視界のなかに、一人の輪郭が薄らと浮かんでいた。

 屋上で見せた屈託ない彼女の笑顔が。


 ーー ねぇ、玲香たちの話を聞いたんだけど、あれって本当なの?

 ーー あぁ、土田の話でしょ。好きだよねぇ、玲香ってホント、人の悪口。

 ーー あ、それって、私も聞いたことある。よく、あぁやって堂々と話せるよね。

 ーー でも、あれって本当なの?

 ーー 大体は本当らしいよ。

 ーー へぇ。だったら、やっぱり土田って嫌になる。火野さんもだけど。

 ーー 何? それが聞きたかったの?

 ーー えっ、あ、うん。実は私、ちょっと引っかかることがあってさ。

 ーー 何、何?

 ーー 土田の話よりそっちが気になる。

 ーー 実は二人、友達だったんだよね。

 ーー 友達って、水原さんと火野さんが?

 ーー そう。結構、仲よかったんだけどね。

 ーー それじゃ、友達の彼氏を奪ったってことなの?

 ーー 今は知らないけれどね。

 ーー で、何があったの? そんな仲がわるくなるようなこと?

 ーー さぁ? けど、悪いってわけじゃないようにも見えるけど。

 ーー でも、高校に入ってからは、二人でいるところはあんまり見ないかもね。

 ーー それって、やっぱり、恋人を取ったのが原因なのかな。

 ーー でも、それって最近だし。

 ーー それに“マネキン”だから、そんなの気にならないんじゃない。

 ーー それ言ったら、元も子もないじゃん。 

 ーー それに、だからって身を引いちゃうんだもん。

 ーー 変だよね、確かに。


「ねぇ、何かお薦めの本ってある?」

「なんだよ、急に」

「ちょっと、気分転換よ、気分転換」

「気分転換って」

「まぁ、ちょっとね」

「…………」

「…………」

「って、なんであなたまで黙ってしまうのよ」

「だって、あれだろ?」

「……まぁ、そうなるかな」

「なぁ、さっき変な話聞いたんだけど、お前ら中学のころ、友達だったのか?」

「中学のころ、か……」

「……違うのか?」

「……そうだよ」

「じゃぁ、お前は彼氏が自分の友達のこと好きだと知っていて、付き合っていたってことなのか?」

「……どうなんだよ?」

「だとしたら、どうする?」

「お前、それって」

「考え方によっては、言い訳だよね、あの条件って」

「お前、何言ってんだよ」

「あれ、冗談じゃなかったら、どうする?」

「冗談じゃない…… それって」


 眼差しは彼を茶化しているように、不敵な笑みをまとっていた。しかし、彼女の笑みを、正面から受け止めることができなかった。

 その日の放課後。いつものように二人は屋上にいた。

 いつもと同じように、グランドの隅を歩いて帰る恋人二人の後ろ姿を、何かを喋るわけでもなく、じっと見送っていた。

 昨日までならば、胸にうずくまる苛立ちのような、気持ち悪さがつきまとっていた。しかし、今日は苛立ちとは違う、肺の奥底から切り裂く痛みが彼を苦しめていた。

 今日の二時間目と三時間目の間の休み時間。その会話は彼の耳に入ってきた。

 屋上から黙って見送る恋人の彼女と、マネキンと呼ばれる彼女が中学時代、友達であったという話を。

 根も葉もない噂でないのは、聞こえてきた会話から伝わってきた。

 だからこそ、なおさら疑念がより苦しませていた。

 好きな人を友達に奪われたのか?

 いくらなんでも、信じられなかった。

 友達だとはいえ、奪われた。だから仲が悪くなってしまったのか、と。

 それを確かめようと、内心覚悟に似た強い意志をまとって屋上に向かっていた。しかし、実際は訊けなかった。

 それがきっかけで、仲違いになってしまったのなら、さらに彼女の傷口を開いてしまう気がさそてしまい。

 迷いが無意識に彼の態度に現れていたのかもしれない。

 彼女はいつになく、会話の途切れ際に、話を割り込んできた。

 風が強い。

 明日の数学が嫌だ。

 新しい服がほしい。

 彼の顔を見ず、遠くを眺めながら。

 そして、グランドの二人を見つけたとき、特にぎこちなくお薦めの本を訊いてきた彼女に、彼は話を逸らした。

 ただの気分転換と反論してきたところで、彼は遠離る後ろ姿に目をやり、話を引き込んだ。

 本当に友達だったのか。

 どちらを望んでいたのか選べなかった。


彼の迷いを気にせず、彼女は友達であるのを認めた。


平然と喋る彼女に、彼の方が動揺して声を詰まらせそうになった。

 辛うじて言葉を繋げて訊いた。

 相手が自分を見てくれていないのに、付き合っていたのか、と。


 付き合うための条件。

 彼女に突き詰められてから、明確な返事をしていなかった。

 実際に自分たちがどんな立場に置かれているのか、とてもあやふやになっていた。

 この疑問を誰かに訊けば、晴れるのか?

 お前ならどうする? と、打ったスマホを眺めた。内容は書けても、呆然としてしまう。

 何度か瞬きをしていると、スマホの画面が暗く静まる。

 スマホを枕のそばに放ると、彼は寝返りを打って肘を突いた。

 数人の友人の顔がよぎる。

 なかには恋人のいる奴もいて、その恋人に同じ条件を示されたとき、そいつはどんな反応を見せるのか。

 考えながらも躊躇してしまう。

 あのとき、彼女の寂しげな表情を見てしまっては。

 なぜ、彼女は身を引いてしまったのかが、訊けなくなっていた。


「……冗談じゃなかったらどうする?」

「冗談じゃない…… それって」

「同じ人を好きになってしまう。そんな偶然って、漫画やドラマのなかだけだって、普通思いよね。まして、親友だったら、その子の性格とか、好みなんかも知っていて、絶対に自分とは違うなって、分かっていたはずなのに……」

「それって」

「不思議だよね、変なところだけは一緒になるなんて」

「…………」

「何、考えているのよ」

「…………」

「ちょっと待って。それって、じゃぁ、冗談じゃないってことは……」

「あなただったら、どうしする?」

「どうするって」

「友達が自分と同じ人を好きになったときに」

「じゃぁ、あの条件ってなんだよ、話がーー」

「友達のために身を引く?」

「そんなの……」

「ねぇ、どうする?」


 聞けなかった。

 友達ために、彼女は身を引いたのか、と。

 彼に尋ねたときの表情は、不安をそのままぶつけられたみたいに痛かった。反面、どこか怒っているようにも見えた。

 何か気に障ることを言ってしまったのか。

 答えが見つからない。

 原因を掴めなかった。

 何度もベッドの上で寝返りを打つが、何も浮かばない。

 ややあって真っ直ぐになり、天井を眺めた。

 非難するような冷たい眼差しの彼女が、蛍光灯の明かりの陰に存在していた。

 彼女の条件は本当にえことなのか、彼にも分かりません。だからこそ、問うのですが、彼女の気持ちは揺らぎません。だからこそ、彼は怖がっています。彼がこの先どうなるのか、見届けていただけると嬉しいです。

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