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別れが悲しいのはあなたのせい

作者: 黒帽子

寒い冬の日、僕は彼女に別れてもらうために公園へと彼女を呼んだ…

彼女はそんなことも知らずに公園に来る

僕はいまになって彼女との思い出が頭の中をよぎっては鮮やかな思い出が僕の決意を揺さぶる…

本当は一緒に居たいのに…僕の○○が尽きるなんて言ったら彼女の方から別れを言うに違いない

でも僕は勝手だ

僕が決意を固めるために、彼女に別れてもらうために

彼女を傷つけるために公園に呼んだのだから…



僕は昔から体が弱かった

生まれたときから心臓に穴があいているとお医者さんに言われ…その後何回か病院に通うことにより心臓の穴はだんだんと塞がっていた

そのかわりに僕の体はどんどん弱くなっていた

すぐに治る擦り傷が僕には骨折のように酷くなることが多々あった

三年間、病院で入院生活を余儀なくされたこともあった…

心が折れてもおかしくないとお医者さんに言われたこともある。考えてみればそうだひとつの怪我が命とりになる体を持っていたら誰でもそう思うに決まっている。でも僕は折れなかった支えてくれていた幼なじみが居たから…彼女にもなってくれた幼なじみが居たから…


でも、もう僕の体…僕自体がもう今の日本の医学では

生きられない。昔から僕を診てくれていたお医者さんに言われたのだ『私は今から残酷なことを言うよ…恨んでくれても構わない。』

「残酷なことってなんですか?」

『君の余命は…あと…“三年"だ。海外にいけば君の体を治す手術を受けられるかもしれないが親御さんの…』

「言わなくていいです。何を言いたいのか分かりますから、『君の親御さんの給料じゃ払えない額』でしょ?」


それから僕は病院に行くことをやめ彼女との思い出を作っていた…でも『僕が死んだら彼女はどうなるんだろう』それを思うと怖くなった

自分を責めたり、他人に当たったりするんじゃないのか僕はそのことを想像するだけで夜も寝れなくなった




彼女が公園に向かって笑って走ってくる

僕のために笑い僕のために走って…

今から君を傷つけるのに…


公園の近くにある幼稚園の時計が7時を知らせる鐘が鳴るのを二人で聞く…これが二人で過ごす最後の思い出…僕が生きてる中で最期の思い出…そんなこと彼女は思いもしないだろう


「ハァハァ…待った?」

「30分ぐらいかな?」

「そこは普通『待ってないよ』とか『今来たところ』とか優しい嘘がつけないの?」

「本当に待ったんだから仕方がないだろ…」

「で、どうしてハルはこんな時間に呼び出したの?」

「僕は…チーちゃんと別れたい」


チーちゃんは固まった。

目が泳いだり、僕の目を見つめたりして今の状況がちゃんと飲み込めてないようで…涙が目にたまっているのが僕にも分かるほど泣くのを我慢しているのが辛い…胸が痛んで『冗談だよ!』なんて言えたらいいのに僕はそんなことを考えてる時点で酷いやつなのかもしれない…


「う、うん…わ、分かった…」

「ケータイのメールアドレス消して…くれないか」

「ッ…なんでなの…なんで!?私何かした?

したなら謝るから!別れないでよ…」

「してない。僕、好きな人ができたんだ」

「嘘よ!私は小さい頃のハルを見てきたから1番ハルのことを分かってる…だって別れたい人がそんなに泣くわけないでしょ!」


僕は冷たい風が吹く公園で…

彼女の前で僕は正座をし頭を下げながらチーちゃんとの思い出を…辛い時にいつでも助けてくれた優しい幼馴染に初めて“嘘"をつく


「別れてください…お願いします…」


チーちゃんはケータイを僕の頭に投げつけて

僕の顔を冷たい手で掴んで自分の顔を擦り付ける

チーちゃんの悪い癖だ…

昔からチーちゃんは悪いことをしたり何かされた時は必ず相手と仲直りするための行動だ

僕はそのチーちゃんの頭に頭突きをくらわせる


「いっ…たぁ!!」

「いったぁぁぁぁ!!」


僕もチーちゃんも叫んで痛みを誤魔化して

チーちゃんは僕の胸ぐらを掴む


「ハルは…私よりも体が弱いんだからこんなことして体に怪我なんかできたらどうすんの!!」

「…」

「なにか言い返しなさいよ…アンタはいま胸ぐらを掴まれて暴言を吐かれてるのにどうして反抗をしようとしないの!?」


僕を離すとチーちゃんは捨て台詞を残して走り去っていった

その言葉を僕は聞くことができなかった

もう…体が限界だった

頭突きをした時点でもうほとんど意識がないのにチーちゃんは胸ぐらを掴んで離した時の衝撃で僕の体はボロボロの状態だ…最後の最期まで愛してくれる優しい僕の彼女だ…


僕はボロボロの体を引きずるように病院まで行き

診てくれていた先生や看護婦の人に挨拶をして回った

『どうしたんだその体は!!』

「転んじゃって…ハハハ…」

『転んだ…ね』

「勘弁してくださいよ…」

『それはこっちのセリフだ』


僕は手術をしてもらった

もう時期いなくなるというのにに先生は『綺麗な体じゃないと天国に行けないだろ』なんて言葉を囁いた…


『おーい、ハルくん起きてるか?』

「…」

『まだ体の疲労が残ってるのか…もうすぐで親御さんが二人とも到着するからな』

「…」

『ハルくん?そうか…頑張ったなハルくん…

11月15日…0時5分…お亡くなりになりました…

ハルくん…三年と言ったけどハルくんは5分だけ生きたよ…』


その後、ハルくんの家族が来て親御さんは私に泣きながら頭を下げていた。『あの子のために泣いてくださってありがとうございます…』泣いてる?私が泣くわけがない医者とは何十人何百人の人の最期を看取るのが多い…そんな私が泣くわけがなかった。


「あ、お母さんこれハルくんの最後の手紙です」

『あの子が?』

「読んであげてください」


ハルくんのお母さんとお父さんは泣き崩れ

私は彼と体との戦ってきた18年間を振り返る

なにかもっと出来ることはなかったのか

私は彼にハルくんを助ける術があれば…そう私は責め

病院を辞めたのはまた別のお話




ハルと別れ走って家まで帰る途中

ハルの体のことを思い出し我に返ると涙が止まらなくなった自分が傷つけた言葉のせいで体の状態が悪化したんじゃないか?そんなことを思うといても立ってもいられず公園へと戻った

そこにハルの姿はなく、あったのは一通の手紙と自分がハルに投げつけたケータイがあった


「ハルのやつ…大丈夫かな」


落ちている物を拾って、家へ帰ると父さんと母さんが晩御飯を作って待っていた


「遅かったじゃないか…ハルくんと何かあったのか?」

「何も無いよ?」

「なら、どうして涙が出ているんだ?」


それを父さんに言われ私は洗面場の鏡を見て泣き崩れ

私は父さんと母さんにハルに呼ばれた事、別れたくて呼ばれたことを話すと二人とも私の側に寄り、静かに聞いてくれた。私は話すと疲れて寝てしまった…




私が母さんに起されると母さんが顔を青ざめて私に電話の子機を渡す。その手はとても震えていてとても嫌な予感がした

「は、はい…お電話変わりました千夏ちなつです」


私はその電話に出たことを後悔した。

声からしてその声はハルを診てくれていた先生だったがそのすぐ後ろで泣いているであろう声が聞こえてきて私の嫌な予感は的中した。


「千夏ちゃん落ち着いて聞いてね」

「…」

「ハルくんが今日…」


私は電話を切り、服を着替えると全力で病院に向かって自転車を漕ぐ

きっと今の私の顔は凄い顔をしているに違いない

すれ違う人達がすごい目で私を見るからだ

そんなのを気にせず私は病院まで漕ぎ続け

ハルが居る病室まで駆ける


「ハル…」


病室に辿り着くとそこにはハルが眠っていた。


「先生…驚かすのはやめてくださいよ

寝てるだけじゃないですか…」


私はハルの体を揺らす

ハルは揺らすと皮膚が敏感なので寝ていてもいつもは飛び起きていたから私はハルの体を揺らす


「あれ…おかしいな…ハルー!起きて!朝よ!」

『千夏ちゃん…もう…』

「ねえ!ハル!目を開けてよ…開けていつものように私に笑ってみせてよ…」

『…』


先生は私の肩に手を置き私の顔を見て首を横に振る

私は思わず泣き崩れて先生の胸に飛び込んだ…


その後葬儀が行われ

ハルの家族や親戚をはじめ、クラスメイトや学校の先生や病院の先生が参加していた


一通り葬儀が終えても誰一人ハルの家族には話しかけていない。挨拶を今しようものなら殴られてもおかしくない…たった一人の一人息子を自分たちより先に亡くなってその場に自分達が居合わせることも叶わず…看取ったのは先生のみ…

こんなことってあるんだろうか…こんな悲しい…ことなんて…


私は公園にあった手紙の封を開ける。

そこには数枚の写真と別れを悟ったハルの一連の行動の意味とどうするべきか悩んだハルの苦悩が書かれていた。最後に私とどうしたいかを書かれた文が長々と書かれ私はハルの気持ちにひとつも気づくこともできずにいた自分を責めそうになるのをぐっとこらえた…『当たったり責めたりするのを想像するだけで夜も寝れなくなった』と書いてあったのを見てしまった私には自分を責めることも当たったりしたらハルに怒られると思って私はハルの気持ちに応えたくなった。




2年後…


今日は成人式、高校時代のみんなと会える機会だ

私は着物を来て成人式に臨み記念写真を撮った

その写真にはハルと仲が良かったクラスメイト達の中心にハルの遺影があった。



「私…ハルの事忘れないから…」





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