道の途中2
代わりと言ってはなんだが、木の根元の奥は洞窟になっていて、光るコケで照らされている。一度中に入ってしまえば、そのあとは、人が楽に進めるほど明るいのである。
この前私の親友が、ここの警備が薄いと言っていたが、そこは問題ない。ここにたどり着ける人間はなかなかいないのだから。いたとしても、きっとそれは人を少しばかり超えたものだろう。
私がそう答えると、親友は苦笑いしていた。間違った回答でもしてしまったのだろうか?私が首を傾げていると、親友はお前はそれでいいと笑っていた。
洞窟を抜けると、そこには泉がある。私がここに通うようになってから、芽吹くまでずいぶん時間がかかった桜がそこにはあった。今年になって、初めて花を咲かした桜である。
この桜を見ているとあの妖精を思い出す。妖精もこの桜のように淡いピンク色の光を放っていた。初めて出会った人外は、私にいろいろなことを教えてくれた。
また、あの優しい妖精に会いたいものである。
今日の桜の様子を確認し、私は立ち上がった。また近いうちにここに来るとしよう。私は来た道を戻って行く。ここにいられる時間は限られているのだ。あまり長い時間いると、あの桜の調子に影響してしまうのだ。影響さえなければ、丸一日ここにいてもいいのだ、だがそれは叶わない。
洞窟を出たあたりで私は後ろを振り返る。そこには来た時と同じ大きな木があった。私はいつもの日常に帰るべく歩き出す。あの子の元に帰るとしよう。