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93.『ご飯はまだか』/『自分が可愛い』
『ご飯はまだか』
ボケ気味の爺ちゃんを、病院に連れてきた。今日は持病の定期検診だ。
体温計を脇に挟んで、計り終わるのを待つ。爺ちゃんは、さっきからずっとお腹を擦っている。どうしたのと聞くと、
「ご飯はまだか。おなか減った」
私は笑ってこう言った。「何言ってるの。昨日食べたでしょ」
『自分が可愛い』
結局人は自分の事が一番可愛いのだ。ある教授は数年前論文を発表した。
疲れているから電車で老人に席を譲らない。週末のカフェで数時間も居座る。空気を読めないのではなく、読まないのだ。
ただ、人は子どものためになら自分を犠牲にする。
『目に入れても痛くない』。次はこれを証明しようと思った。