86/124
86.『叔父さん』/『知らない世界』
『叔父さん』
叔父が亡くなった。喉に食べ物を詰まらせて倒れ、誰にも気づかれることが無かった。皆、外出していた事を悔やんだ。
遺体が自宅へ戻って来て、布団の周りに家族が集まった。生前は嫌われ者だった叔父だが、今はこうして皆が彼を見つめている。
こんな穏やかな顔を家族に見せるのは初めてだ。
『知らない世界』
私は、先天性の病気でずっと入院している。
でも、十歳の時に少しだけ小学校に通ったから、再び病院に戻っても仲良くなった子が訪ねてきて、それほど暇ではなかった。
やがて友人は成長し、服装も格好いい服やスーツに変わった。
受け入れられない。私の時間は、昭和で止まっている。