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84.『坊主頭』/『かすかに』
『坊主頭』
面白い店員がいるらしく、わざわざ中心街までやって来た。
「坊主頭でお願いします」私の髪を切るのは、生粋の大阪人だった。ジョークを交えた会話は楽しく、あっという間に時間が過ぎた。
ありがとうとお金を差し出すと、
「まだまだ」と言ってお経の本を開いた。
誰が頭の中まで坊主にしろと言った。
『かすかに』
大雪で寸断されていた道路が、一週間ぶりに開通した。早速、雪崩の被害にあった家の捜索が始まる。
山に近い木造の古びた家を捜索していると、かすかに犬の哀しそうな声が聞こえた。
生きてる! 声を頼りに掘ると、雪で落ちた天井に潰された家主と飼い犬が見つかった。
犬は死後一週間経過していた。