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77.『好きな服』/『手に入れたくないもの』
『好きな服』
ベッドの下の収納スペースには秘密があり、一日一回服が知らぬ間に総入れ替えされるのだ。
お気に入りの服が現れると取りだしておく。いつの間にか部屋は好きな服でいっぱいになった。
好きな服を着て好きな紅茶を飲みながらテレビをつけると、部屋から服が消えた人々のニュースをやっていた。
『手に入れたくないもの』
「愛と殺人って似てるわ」
「ほう、何を以てそう思う?」
「共通項は支配欲。相手を思い通りにしたいっていうやつ」
「なるほど。人間は何でも手に入れたがる。知能が発達した事の副作用さ」
「それが悪い事の様に言うのね」
「当然さ。君の様に僕を殺そうとする存在なんて、傍に置きたくなかったよ」