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74.『立ち上げ』/『太陽のあいさつ』
『立ち上げ』
ちょっと来ておくれ、と七十になるお袋が居間から呼んでいる。
「何だい」
「お前がくれたこのパソコンだけど、スイッチ入れてから立ち上がりが遅いんだ」
中古を安く買ったのが災いしたらしい。「我慢してテレビ見てて待っててよ」
「寝起きが悪いのは、お前と一緒だね」
お袋は昔懐かしげに笑った。
『太陽のあいさつ』
太陽は夕方になるとさよならのあいさつを僕へ催促する。僕に気づいてもらおうとキャンパスにグラデーションのある絵を何枚も見せる。
面白くて放っておく。そして「おやすみ」と絵描きに疲れた彼女に返してやると、ぱあっと一番の輝きを放って地平線へ去っていくのだ。
太陽は可愛い。
『太陽のあいさつ』は、毎月開催のツイノベデー参加作品です。お題は「太陽」