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73.『天秤』/『受験』
『天秤』
「あなたの一番大切な物は何?」
「自分の命さ」
「その次は?」
「生殖器。それが無くなるのは怖い」
「ふん、次は?」
「仕事だ。お金があれば衣食住に困らない」
「ねえ、私はいつ言ってくれるの?」
「僕の家族を殺した奴を天秤にかけるなんてくそっくらえだ。汚らしい!」
女は笑った。
『受験』
受験で新幹線に乗った時の話だ。
緊張して体を強張らせていたら乗務員の女性に声をかけられた。その旨を伝えると、その時は「がんばってくださいね」と笑顔で去ったが、一時間後に再び同じ人がやって来て、車掌と乗務員全員の応援カードをもらった。
僕は合格した。乗る新幹線を間違えていなければ。