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7.『病気』/『見えないのよ』
『病気』
「こちら消防で――」
「すぐ来てください、妻が大変なんです!」
「どうしました!?」
「はい。一週間前からいつもの数倍の濃さのコーヒーを飲んだり、読めもしない英字新聞をとったり。明らかに異常行動です。お願いです。助けてください!」
「……ご主人、それはただの中二病です」
『見えないのよ』
「ただいまー」しかし妻の返事がない。朝から無視されていたので心配だ。
台所に妻がいた。
「いるんなら返事しろよ」
それでも口を開かない。
「おい!」彼女の肩をつかむと、
「今日、私の姿は光学迷彩で見えないっていう設定なの。そこんとこよろしくね」
私の妻は中二病である。