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69.『腕を貸そう』/『光は届くか』
『腕を貸そう』
骨折した右腕を風呂のお湯で流していると、鏡の中の自分が
「オレの右腕を貸そう」
と迫ってきた。
驚いて椅子から転げ落ちたものの、身ぶり手ぶりに誠意を感じたので承諾した。
「で、対価は何だ?」と鏡の俺に尋ねると、
「オレはお前と同じ動きしか出来ない脳無しだ。だから脳をくれ」
右腕が伸びてくる。
『光は届くか』
日本から強光源を発射し、それを大量の鏡を使用して地球を一周させようという計画が始動した。世界中の鏡を集めれば可能だと専門家は分析し、巨大鏡の制作も国々が協力して進められた。
だが、計画は中断した。鏡が足りないのだ。国同士の政治状況が理由だった。
光は届かなかった。
毎月14日開催のツイノベデー参加作品です。お題は「鏡」です。