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60.『二輪二脚』/『独りタバコ』
『二輪二脚』
四年生の二人三脚リレーが始まった。舞がおじいちゃんを連れてトラックで待機している。
「うーん、走るのは無理だぞ……」とおそるおそるおじいちゃんが言ったのだが「絶対大丈夫!」と強く手を握ったのだ。
バトンを受け取ると舞は、おじいちゃんが乗る車椅子を力強く押し始めた。
『独りタバコ』
寒空の下、私はアパートの入口でタバコを吸う。部屋で吸っていたら、妻にドブ川のゴミを見るような目をされたからだ。
「ガミガミうるさいんだよ。俺の嗜好にケチつけるなっての」隣人が愚痴を言い、そのまた隣の住人が「そうそう」と煙を吐く。
三人で時と場所を共有しているのに、心は軽くならない。
『二輪二脚』は、毎月14日開催のついのべでー参加作品です。テーマは「運動会」