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6.『だし汁』/『夫婦』
『だし汁』
風呂が壊れたと言って、アイが家へやってきた。
「ありがとう。さっぱりしたわ」
「それはよかったぜ」
すると、遊びに来ていた俺の友人がつぶやいた。
「オレも風呂入っていこうかなぁ」
「おういいぞ。アイのだし汁は既に出来上がっているぜ!」
「変な言い方しないでくれる……?」
『夫婦』
夕食後、一緒にお風呂へ入ろうと家内に誘われた。
「何を言ってるんだお前は」
「いいでしょ。たまにはあなたに甘えたいの」そう言って後ろから抱きついてくる。
私はふと後ろを見た。息子が独立して数年。そこには、数十年前時めていた頃と同じ彼女の笑顔があった。
お互い老けたなぁ。