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58.『十三日の金曜日に』/『歩こう』
『十三日の金曜日に』
ジェイソンって怖いよなー、と友人がつぶやいた。「いきなり襲ってくるんだろ。嫌じゃん」
待て待てと別の友人が割り込んだ。「チェンソーを持ってるのが男だからダメなんだよ」
「どういう事だ」
「幼女だと考えてみな。幼女がニコニコ顔でチェンソーを持ちながら風呂場に入ってくるんだ」
こえーよ。
『歩こう』
ドン、と肩がぶつかった。転びはしなかったが心臓がバクバクしている。
相手は舌打ちをして機嫌悪そうにしたが、すぐに大丈夫ですかと声をかけてきた。若い男だ。大丈夫だと伝えると、すみませんと謝って去った。
視力を失ってから散歩が怖くなったが、人々の温かさが助けてくれる。探検のようで楽しい。