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56.『白猫へ』/『黒猫へ』
『白猫へ』
「オレってつくづく不幸な生き物だと思う。人間の家で生まれた時、黒は災いを呼ぶからって捨てられた。それから野良になったが相変わらず煙たがられ、いたずら坊主に石や枝を投げられた事すらあった。
なあ白猫、教えてくれ。どうやったらオレは白猫になれる? 綺麗で皆に好かれる存在になれる?」
『黒猫へ』
「黒猫、君はとっても大きいんだね。何がって? 心が。なぜ自分を悪く言う人間という種族を恨まない? どうして好きになれる?
子供のために野良犬を追い払った事があったよね。君のとりえはその優しさだ。優しさで誰かを不幸にする事は無いんだ。いつか必ず、理解してくれる人は現れる」