4/124
4.『ヒーロー不在』/『小さな勇者』
『ヒーロー不在』
「おはようございます!」悪役が挨拶するが、撮影隊は慌てた様子だ。
「何かあったんですか?」
「実は、主役の到着が若干遅れそうなんだ」
うーんとうなる一同。すると監督が
「よし、悪役だけ先に撮ってしまおう」
「え?」
かくして、悪役はしばらくの間エアバトルをするはめになった。
『小さな勇者』
女性の服にバッタが付いていた。「は、早く。誰か取ってぇ!」
すると、小さい女の子がそれをつまむ。
「あ、ありがとう……」女性はヘタヘタと座りこんだ。
バッタは女の子の手の中で暴れている。
「あっ!」
手からバッタが飛んで女の子の顔に体当たりした。
その姿はまさに勇者だった。