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33.『公害』/『迎え』
『公害』
隣国の首都で工場の煙などによる環境汚染が深刻化しているらしい。この国にも風に乗って有害物質が流れてきているとニュースでやっていた。
「あなたのおじいちゃん、隣の国に住んでるんだよね? 大丈夫なの?」女の子の問いかけに、僕は冷や汗をかいた。
言えない。祖父が工場経営者だなんて言えない。
『迎え』
安全のために、私は女の子を毎朝迎えに行っている。
「せんせいはね、いつもじかんピッタシにきてくれるんだよー」
給食時間に友達と話している。えくぼが可愛い。
当たり前じゃないか。彼女が何時に起きてどんな朝食を食べ、どのタイミングでトイレと歯磨きと洗顔を済ませるのか、全て分かるのだから。